5分で読める淡い百合両片思い5~兎のはらわたはビターチョコレートで出来ている編1~

水色桜

第1話

ドクドクドクと鼓動がけたたましく鳴り響き、視界がチカチカと点滅する。嫌というほど自分が緊張していることを自覚する。でも今手を挙げないと何も変えられない。

「ああのぅ…」

すぐかき消えてしまうようなか細い声で七海は手を挙げた。しかし、誰も七海が手を挙げたことに気付かない。跳ねる心臓に鞭を打ち、もう一度今度は息を大きく吸って訴えかける。

「ああのう!私、私がお姫様の役をやってもいいですか!」

今度はちゃんと届いたようだった。まるで空から槍が降ってきたような驚きをもって周囲が七海を見ていた。言った。言ってしまった!七海は自分が大きな一歩を踏み出せたことに驚きつつも、これで劇に出られるかもしれないという期待で胸を膨らませていた。

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昨日見たプリシュアは敵だったキャラクターが味方になる熱い展開だった。春ちゃんとプリシュアについて話そうと後ろの席に声をかけようとする。しかし

「春~。昨日のプリシュアちょー面白くなかった?」

元気印の女の子、美香が先に春ちゃんに話しかけていた。「私もそう思う。」その言葉がのどに詰まって出てこない。いつもそうだ。春ちゃん以外の人がいると言葉がのどにつっかかって出てこなくなってしまう。

「そういえば今度学園祭でやる劇で春ってば王子様役をやるんだって?」

「まあそういう流れになっちゃって…」

「まだお姫様役は決まってないんだけ。まあ大変そうだもんね。」

それを聞いて私はこれだと瞬時に思った。私の内気な性格が災いして、ここ最近春ちゃんと話せていなかったのだ。劇を一緒にやればきっともっとお話しできるはず!次の学級会で手を挙げようと強く決心したのだった。

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お姫様役の他の立候補者がいなかったため、無事私がやることになった。

「七海が手を挙げるなんて思わなかったよ。小さい頃から知ってるはずなのに、本当は何もわかってなかったってことか。」

春ちゃんが少し寂しそうにつぶやく。

「そそんなことない…。ただ…いやなんでもない。」

「いや、なんだよ気になるじゃんか。」

言わなくちゃ。また心臓がドクドクドクとけたたましく鳴り響き始める。しかし、一度勇気を出せたおかげか、その拍動も少し心地よく感じた。私より背の高い春ちゃんの襟をつかみ、私と同じ高さまで春ちゃんの顔を持ってくる。黒色のショートボブからかすかにお日様のにおいがした。

「春ちゃんと一緒に同じ時間を過ごしたかった。ただそれだけ。」

自分で驚くほど大胆なことを気づいたら言っていた。もしかしたら私のはらわたはビターチョコレートみたいに苦くて真っ黒なのかもしれなかった。

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