閃拳のナツミ

うらみ

第1話 ロマネスティアヘ

目を覚ます。辺りを見回す。そこは全く見慣れない場所であった。

「夏海さん、ですね?」

夏海はゆっくり立ち上がり、目の前の女性を睨みつける。

「あんた、何者?」

女性は夏海の凄みに動じず、淡々と話し始める。

「私はオリアンナ。女神です。ここに来るまでの事覚えてますか?」

夏海は首を横に振った。

「あたしはどうなったの?」

「あなたは死にました。誰かに背を押され…階段から転げ落ちて。なんともまぁ呆気ない最後でしたよ。」

「犯人とかわかんない?全身全霊かけて末代まで呪うから。」

夏海は顔色変えずに即答した。

「残念ながら特定までは…ただそんなことをしなくても良いと私が断言します。なぜならあなたを私が管理するこのロマネスティアに転生させることにしたからです!!!」

オリアンナはどや?と言わんばかりに胸を張っている。

「…このまま死んだら駄目なの?」

夏海は特に関心もなさそうに地べたに座り込む。

「え?なんかこう…やったー!みたいな反応とか無いんですか?大抵こういうのって喜ばれるというか…セカンドライフわっしょい!みたいなテンションで皆なるはずなんですけど。」

「そいつらが人間じゃなかったか、あたしが人間じゃないかじゃない?」

「…。」

度し難い沈黙が二人を包む。

「え、えーっと…。コホン。でもこれはもう決定しました!あなたはあなたの幸せを見つけるために、ロマネスティアで生まれ変わるべきです!きっと多分恐らく、もしかしたらそうです!」

「ふわっふわじゃん!そこ女神なんだからちゃんとしてくれなきゃ困るんだけど!」

「私!女神の中でも低級なので!!これも上司の命令で仕方なーーーくやってる事なので!!!そこは悪しからず!!!」

「こっちでも、それ系の話聞くのヤなんだけど…んで、転生した先では何しても良いの?」

「はい!どーーーせ全部女神の手のひらの上なので!!何してもらっても大丈夫ですよ!」

「言質取ったからね。後悔しても知らないよ。出口あっちね。じゃああたし行くから。」

夏海は促されるまでもなく自らスタスタと扉の方に歩いていく。

「あ、待ってください。転生の際、一つだけ能力をお渡しすることになってます。お好きな能力をお渡ししますよ。」

「能力ぅ?いらないいらない。そんなの面倒なだけじゃん。」

「渡すことが義務になってるんです。渡さないと私が仕事の手順ミスったことになるのでこれまた面倒なんです。」

「わかったわかった。じゃあこういうので。」

夏海は能力の委細をオリアンナに伝えた。オリアンナは祈りを捧げると夏海の左腕にブレスレットが現れた。

「はい!これでやることは終わりです。では良いセカンドライフを~。」

オリアンナは手を振り、夏海を見送った。

「ありがとさん。」

夏海は一言だけ残し扉を通っていった。

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