第3戦 様銀二の無双

 第二戦。


 まさか一校抜けるとは思ってなかったな。


 多分、今部室でこれ見てたとしたら大変な事になってるんじゃないだろうか。


 あと2校抜いたら決勝ね。


 まぁ、楽しむつもりで来てるんでもう負けてもいいんだけど、ここまでやれるんなら優勝、したいよなぁ!


 中央のネット際に様銀二と相手が寄る。


 「君は今までのどの選手とも違うようだ。

 データがない。

 しかもそれ、FLマイト電極を使って一校を勝ち進んだ。

 尋常ではない才能の持ち主だと見た。

 じゃんけんだ。」


 掛け声と同時に、手を出す。


 相手はパー。


 こちらはグー。


 サーブ権を取られた。


 無双もここまでか。


 まぁ、そう上手く行かないよな。


 「全力で行かせてもらう!」


 そう言い放って相手が持ち場に行く。


 持ち場に戻るとホイッスルが鳴る。


 あー、勝てればサーブ権が取れるんだが何もかもが初めてで打ち返しも分からん。


 どうしたもんか。


 と、電磁球が飛んで来る。


 ん?


 この軌道はインだな、有効打だ。


 何か心なしか球速が遅い気もするが打ち返すか。


 スパーン、バリィ!


 「勝者、様銀二!」


 「打ち返した!? しかも速すぎて見えなかったぞ!?」


 相手が狼狽している。


 あ、サーブ権がこっちに移るのか。


 そういえば、この戦いって電磁だから夜になるんだよね。


 まぁ、理由は単純に見えないからなんだけど。


 と言うか、入部したその夜に世界大会とか笑える。


 ピーッ。


 ホイッスルが鳴る。


 じゃ、無双開始しまーす。


 スパーン、バリィ!


 「勝者、様銀二!」


 「ダメだ!サーブ権を取っても取られても変わらない!」


 そのまま一人、二人、三人と抜き二校目撃破。


 下方校だから休みなく戦いが来る。


 三校目。


 あれ、準々決勝か。


 言葉にすれば近そうだが、まぁまぁ遠い。


 相手校は十分な休息の上に戦いが来ているがこちらは連戦、しかも一人の上ベンチのサポートも無しだ。


 だって、みんな疲弊してるんだ。


 動けるならとうに戦っている。


 唯一動ける樹里菜先輩は部長のために奔走している。


 ここでトロフィー持って帰ったらカッコ付くだろうなぁ。


 次の高校も三人抜きでストレート撃破。


 流石に少し疲れて来たな。


 一校最低でも九戦しなきゃいけないからね。


 準決勝。


 何回かサーブ権がまた相手に移ったが、打ち返してサーブ権を勝ち取り撃破。


 完全に無双だ。


 九戦でぶち抜き、まさかの一人で決勝までやってきてしまった。


 観客の歓声は完全に様銀二に向けられている。


 数分の小休止でスポーツドリンクを飲むだけでは追いつかなくなってきたな。


 ここで意外な事が起きた。


 「様銀二君!」


 「あ、樹里菜先輩だ。」


 「あ、じゃないでしょう!

 FLマイト電極一本でやったって聞いて血の気が引いてるんだよ!?

 部長どころじゃないよ! その前に君が死んじゃうよ!」


 「……お、そうか。」


 ここまで疲労しているのは連戦もあるが、自分の力を過度に引き出すFLマイト電極のせいかも知れないんだな。


 しかし、FLマイト電極だから練習していない自分でもここまで来れた可能性はあるんだよね。


 ここでALマイト電極に変えたら負けるかも知れない。


 もう決勝だもの。


 「様銀二君! ALマイト電極持ってきたから、今すぐ変えて!

 ここまで持った方がおかしいんだよ!」


 「……ます。」


 「え?」


 「このまま行きます! 僕は生きて勝って帰る!」


 「無茶言わないで! 本当に死んじゃうよ!?」


 確かにどこかしか座ったりしたら即砂鉄が付いてたのに、今はそれが無い。


 体内電力が落ちてきているのかもしれないな。


 こんな事は今までなかったもの。


 でも、言ってみたらここから一般人の領域なんじゃないの?


 ALマイト電極で逃げる事はしない!


 樹里菜先輩の制止を振り切って、コートの中心に歩み寄る。


 「まさかFLマイト電極でたった一人きりで戦っていたとはね……。

 決勝の相手に不足は無い!」


 「ちっさいからって舐めないで下さいよ!?」


 お互いがじゃんけんをし、手を出す。


 相手はチョキ。


 僕はグー。


 よし、先制だ。


 この試合も貰った!


 しかし、様銀二に重大な異変が起きていることに自身は気付かなかった。


 ここまでの様銀二の獲得賞金、750万円。

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