ざ、懺悔してくださいっ!~清純シスターとの同棲から始まる見習い教会ライフ~
楓原 こうた【書籍6シリーズ発売中】
プロローグ
「違うんです、大司教様」
ひんやりとした固くも冷たい床の感触、徐々に身体の心配をしてしまいそうな僕の足に乗りかかる重さ。木漏れ日さえ入らない窓がない室内には淡く揺れるランタンの光だけが残っていて、顔を上げた先には今でもはち切れそうな祭服を着た筋骨隆々の男性がお化けのように立っている。
「何が違うというのですか?」
「僕は別に懺悔をしに来たわけじゃないんです。正確に言えば、強制的に《・・・・》飛ばされただけなんです」
「ここは懺悔室……己の罪を告白し、自ら向き合う場所です。何も間違っていません」
とても優しい声で目の前の男───懺悔担当、ロイゼン大司教は、僕の主張を無視して口にする。
「あなたは自らに罪があると感じ、これからという人生に向き合おうとしています。そう恥ずかしがることはありません、人は誰しも過ちを犯してしまう生き物ですから」
「いえ、そうではなく───」
ゴトッ、と。正座している僕の膝の上に、平で大きな石の塊が乗せられた。
これで四枚目だ。そろそろ前が見えなくなりそう。というより、足が潰れそうでとても痛い。
「さぁ、懺悔を───あなたは、どんな罪を犯したのですか?」
男だと言うのに、まるで地母神のような笑みだ。聖職者だからか、人の心に寄り添える優しさが見て取れる。
だが、勘違いしてはならない。見て取れたとしても、現在進行形で足に多大なダメージを与えているのは大司教様だ。
嘘だと思うのなら、見てみればいい……大司教様の手には、あと二枚ほど平たい石が握られているから。
『そ、そろそろ足が限界だ……ッ!』
『どうして俺がこんな目に! ただ、浴場を覗きに行っただけじゃないか!』
『逃げないと、踏ん張ることもままならない小鹿の足にされちまう!』
僕の背後から、そんな同志の声が聞こえてきた。
彼らは一体何枚目なのだろうか? 率先して大司教様とお話している僕よりかは少ないはずだけど……いけない、そろそろ本気で足が潰されそうだ。
『お、俺は逃げるぞっ! 足がなくなったら、シスター達とデートすらできねぇんだから!』
首を向けていないので状況はよく分からないけど、誰かが立ち上がる音が聞こえてきた。
手首が縛られ、石を乗せられているにもかかわらずよく立ち上がれたものだ。恐らく、最後の力を振り絞ってこの懺悔室から出ようとしたのだろう。
しかし───
「こらこら、どこに行かれるというのですか?」
『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』
目の前にいたはずの大司教様が消え、そんな叫び声が響き渡った。
一体何が起こったというのだろうか? 恐ろしくて想像したくもないし、後ろを振り返りたくもない。
『こんな道具さえなければ、俺達は
『誰だよ、こんな道具を開発したのは!』
『ひでぇ……ひでぇよぉ』
「さて……」
やりきったような顔をして、大司教様が僕の前に戻ってきた。
「懺悔……しますよね?」
そして、僕達に聖者の笑みを向けた。
『『『『『………………懺悔します』』』』』
───どうして、こんなことになったんだろう?
僕は重たい石を抱きながら、そんなことを思った。
とりあえず───
「僕は、シスター達の裸が見たくなってしまって……」
大人しく、己の罪を告白することにした。
腕に着いた、諸悪の根源であるブレスレットを睨みつけながら。
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次話は12時過ぎに更新!
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