レベル1の俺が、異世界で魔王として召喚されました

あずま悠紀

第1話


「俺の力を使ってくれないか?」

目の前に突然現れた男は、俺にそう言ってきた。いきなりそんなことを言われても、俺にはなんのことかさっぱりわからなかった。いや、だってそうだろ? さっきまで家にいたはずの俺が、急に見知らぬ場所に移動し、目の前には変な格好をした男がいるんだ。誰だって困惑するはずだ。

だけど……その男性の顔は、まるで全てを知っているかのように、自信に満ち溢れた表情をしていた。

「えっと、貴方はいったい……」

「……すまない、今は何も言えないんだ。……だが、これだけは覚えておいてくれ」

男はそう言うと、真剣な表情をしてこう言った。

「この世界を平和にするため、どうか俺と一緒に戦ってくれないか!」

……本当に意味が分からない。なんで、こんな見知らぬ場所でこんなことに巻き込まれなければいけないのか。ただ、一つだけ分かったことがある。この人はきっと、俺が何を言っても自分の意見を曲げないだろう。それなら、このよくわからない状況を受け入れるしかないのかもしれない。

(まぁ……ここで何もしないよりマシかな)

俺はそう思った後、目の前の男に言った。

「正直よく分かりませんけど……俺なんかでいいなら手伝いますよ」

「……ありがとう」

そう言った男の表情は、さっきとは違い安心した様子だった。そして、その表情を見た俺は思わず、こう口にしていた。

「えっと、そういえば自己紹介がまだでしたね! 俺の名前は蓮って言います。よろしくお願いしますね!」

「あ、あぁ。俺はユウマだ。よろしく頼む」

こうして俺は、謎の男と共に世界を救うことになったのだった。


――翌日 俺は、昨日ユウマさんとした約束を果たすため、朝早くに目を覚ました。ちなみに、あのあと家に帰ってみると時間は夜の9時を過ぎていて、両親にこっぴどく叱られた。……いや、だってさ、仕方ないじゃん。あんなことがあったんだから。

(それにしても、昨日は本当に疲れたなぁ)

結局昨日は色々なことがありすぎてあまり眠れなかった。

それに……ユウマさんの言ってたことも少し気になるんだよな。

『この世界にいる人族以外の種族を全て殺すこと』

ユウマさんは確かにそう言った。だけど、もしそれが本当だったら絶対に止める必要があるだろう。だって、そんな物騒なことはやりたくないし、それに……友達を失いたくないから。

(でも、そんなことして本当にいいのかな……)

俺がそんなことを考えていると……

「おはよう。どうやら、昨日のことで悩んでいるようだな」

ユウマさんが俺の元にやってきた。その表情は、何かを決意したような表情をしていた。「ユウマさん……」

「単刀直入に言おう。お前は今この世界で起こっている問題を知っておかないといけない。だから、今からお前にすべてを話そうと思う」

「……すべて?」

「……ああ。そうだ」

そう言うと、ユウマさんは話し始めた。

「まず始めに、俺たちが今生きているこの世界は、お前が住んでいた世界の他にも、もう1つ別次元の地球が存在するんだ」

「もう1つの地球!?」

「……そして、そこには様々な種族が共存している」

「……ッ!」

まさか、そんなことがあるなんて……。

「……それでだな、この世界にある2つの世界が衝突する原因になったのは、とある存在によって引き起こされたものなんだ」

「……え?」

ちょっと待ってよ。それってつまり……。

「……この世界を作った神様ってことですか?」

「そういうことになるな」

まじかよ。それじゃあ、やっぱり神隠しはただの失踪じゃなかったのか? でも待てよ。それならどうしてこの世界だけこんなにも歪になっているんだろう。それに、そもそもなんで別の世界の存在を知っていながら、その世界に攻め込もうとしているのかがわからないんだよなぁ。俺がそのことを聞くと、ユウマさんはゆっくりと話し始めた。

「……実は、この世界を作り出した神は3人いたんだ。だけど、ある時あることがきっかけで争いが起こり、それぞれの神が自身の世界を滅ぼそうとした。それを危険視したほかの神々は協力して、この世界を作り直した。その結果、この世界の歪みが生じたというわけだ」

「そうだったんですね……」

ん?……ちょっと待てよ。だとしたらおかしいじゃないか。なぜそんなことを知ってる人がいるのに、この世界を壊そうとしているんだ? 疑問に思った俺は、そのことをユウマさんに聞いてみた。すると、彼は少しだけ考えた後にこう答えた。

「おそらく、それは自分たちの思い通りに事が進まないと思ったからだろう」

「……なるほど」

要するに自分たちに逆らう者が現れるかもしれないと考えたってことか……。なんかすごい迷惑なんだけど!? てか、それって神様とか関係なくない!? そんな俺の心を読んだかのように、ユウマさんが言った。

「そう感じるかもしれないが、これが今の現状なんだ。今は何とか抑えているが、このままではいつ戦争が起きてもおかしくない状況にある」

「……分かりました。それなら俺に任せてください!」

「……本当に良いのか?」

ユウマさんは、どこか心配そうな表情を浮かべていた。そんな彼に対して俺は言った。

「大丈夫です! こう見えても意外と鍛えてるんですよ?」

そう言って俺は、腕に力を入れて力こぶを作って見せた。それを見たユウマさんは、驚いた表情を浮かべた後、少し嬉しそうな顔をしてこう言った。

「そうか……。なら安心だな」

そして、俺たちの戦いが始まった――

本文: 異世界召喚された蓮だが、そこは魔物たちに襲われる危機に瀕していた。だがそこに現れた青年により救われることになる。そして青年は自らを魔王だと言い始めたのだった――

※本作は現在執筆中のものです。そのため更新速度は遅いです。

タイトル:勇者パーティーに追放された荷物持ちですが【改稿版】〜不要になったのでスキルを返品します〜 リンク(作者)

: あいるびーばっく==☆○ω〒|^)

あらすじ 勇者パーティとして旅立った少年『ユウキ』は魔王を倒すために旅をしているのだが、仲間である少女からいきなりクビを宣告される。その理由があまりにも理不尽であったため、ついキレてしまった『ユウキ』は勢い余って彼女の大切な装備一式と、ついでに彼女自身を追放してしまうのだった……

〜その後の話〜

(※以下本文↓↓)

──あれから数年が経過したある日の事だった。僕の名前は『ユウキ』かつて『聖騎士』と呼ばれ世界のために戦っていた男だ。……いや『だった』と言った方が正しいだろう。なぜなら、僕は今や『無職』なのだから……。

(はぁ……なんであんなことしちゃったんだろう)

僕『ユウキ』はかつて勇者パーティーの一員として旅立ち、仲間たちと共に魔王を倒したことがある。その時は『聖剣』に選ばれた自分が誰よりも優れた存在だと思っていたが、それは大きな間違いだったと思い知らされた。

(あの時の『聖女』様の言葉を信じた僕が馬鹿だったんだ……)

いや、正確には『元』だが。まぁどちらにせよ今となっては過去の話だ。とにかく『聖女』様に裏切られてからというもの、今まで築き上げてきた地位や名声は一瞬で崩れ去り、気づけば周りから『役立たず』と言われるようになった。

(それにあの時『聖女』様が最後に残した言葉も気になるしな)

あの時は怒りで頭が真っ白になっていたせいで気付けなかったが、今思うととても意味深な発言だと思う。もしかしたら何か意図があっての発言だったのかもしれない。

(それにしても『役立たず』かぁ……)……うん、改めて言葉にされると傷つくなこれ。だけど仕方ないだろう。なにせ今の僕には何もないのだから……

(……よし決めた!)

今日からはもう一度『やり直し』てみよう。もちろん、最初から全てをやり直すわけじゃない。『冒険者』としての経験を活かしながら少しずつ前を向いて頑張っていこうと思う。

そうすればいつかきっと報われるだろうから……

(そうと決まれば早速行動開始だ!)

僕は自分に気合を入れ直して勢いよく立ち上がった。しかしその直後、ある異変に気がついたのだ。

「……あれ?」突然の出来事に困惑していると、背後から聞き覚えのある声が聞こえてきたのだった。『おーい』その声はどんどん近付いてくると、今度は目の前で止まりこう告げた。『探しましたよ先輩♪』そこにいたのは黒髪ロングヘアの女の子であり、かつての仲間でもある人物だったのだが……その姿は当時とはだいぶ変わっていた。何故なら彼女は全身鎧を身に着けており、その手には大きな盾と剣が握られていたのだから……。

(いやいやいやいや!!)待ってよ。なんでこの子がいるんだよ! しかも何その格好? なんで武器まで持ってるの!? そんな驚きの連続に呆然としていると、彼女がこんなことを言い始めたのだ。『どうしたんですか先輩?』その言葉に我に返った僕は彼女に尋ねた。「な、なんでそんな格好してるの……?」それを聞いた彼女はキョトンとした表情でこう返した。『だって私、もう勇者パーティーの一員じゃないですよ? だから戦うのは当然じゃないですか〜』その瞬間、頭の中が真っ白になる感覚に襲われた。まさかとは思っていたけどまさかここまでとは思っていなかったからだ。

(どうしよう……)

完全に想定外の展開に頭を悩ませていると再び彼女から声をかけられた。「ねぇ先輩? さっきから黙ってばかりですけどどうかしたんですかぁ?」そう言って首を傾げている姿は昔の姿を彷彿とさせるものだったが……今はそれが逆に不気味に感じた。だってそうだろう。いくら見た目が変わろうと中身は変わっていないはずなのだから……なのに目の前の彼女はいったい誰なのだろうか?

(ダメだ! もう耐えられない……!)そう心の中で叫んだ瞬間だった──突如として謎の頭痛が襲い掛かってきたのだ。あまりの痛さに頭を押さえていると、目の前にいたはずの彼女が消えていることに気がついた。それに驚いて顔を上げると、そこにはさっきまでとは違う雰囲気を纏った彼女がいたのだ。そしてそんな彼女の口から衝撃の言葉が発せられたのだった──「さぁ先輩行きましょうか!」

(え……?)一瞬何を言っているのか分からなかったが、すぐに正気に戻った僕は急いで首を横に振った。しかし彼女はそんな僕を気にすることなく話を続けたのだ。『どこに行くかってぇ? それはもちろん『元』仲間達のところですよ♪』その言葉を聞き背筋が凍りついたのを感じた。

(どうしてそれを……)そう思ったのも束の間、目の前にいる少女はとんでもないことを言い出した。「あ、そうだ! 折角なのでこのまま旅に出ませんか?」その提案を聞いた僕はすぐさま反論しようとしたが、それを遮るようにさらに驚くべき言葉が聞こえてきた。「実は私……一度この世界を見て回りたいと思っていたんです」そう言った直後だった……まるでタイミングを見計らっていたかのように突然辺り一面が光に包まれたかと思うと、気がついた時には別の場所に移動していたのである。突然の事態についていけず唖然としていたが……ふと我に返って辺りを見回してみるとそこには予想外の光景が広がっていた。なぜならそこに広がる世界は、僕の知らない場所だったからだ。

(なんだここ……?)見たこともない風景に戸惑いを隠せないでいると、隣から声が聞こえてきた。「どうです?すごいでしょう?」その声に反応して振り向くと、そこには何故か得意げな表情を浮かべている彼女が立っていた。そんな彼女の姿に少し苛立ちを覚えたもののなんとか抑えてこう問いかけた。「……ここはどこなんだ?」するとその問いに答えたのは意外にも隣にいた彼女ではなく彼女の隣にいる人物であった。「どうやら君たちにはこの空間の事がわからないらしいね」そう言いながら近づいてきた人物はフードを被っていて顔は見えなかったが……声の感じからしておそらく女性であろうことがわかった。

そしてその女性は続けてこう言った。「ここは言わば異次元の世界みたいなものかな」そう言うと、なぜかそこで話を終わらせてしまったのだった。それに対して不思議に思った僕は思い切って尋ねてみたのだが、帰ってきた言葉はあまりにも残酷なものだった──「ごめんね。これ以上はまだ言えないんだ」それから僕たちは彼女と少しの間だけ話をした後、そのまま別れたのだった──


──これはある少年とその仲間たちの物語である──

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