第58話
『旅人の足休め亭』に足を踏み入れたエルクとルリは、質素だが何か気品を感じさせる『旅人の足休め亭』の玄関ロビーを進んでロビーの奥にある受付カウンターに向かった。
「いらっしゃいませ。本日はご宿泊でしょうか」
「ああ、宿泊で頼む」
「はい。当宿は宿泊費を含めた費用が良心価格となっておりまして、宿泊のみですと一泊、十万円、食事付きですと一泊、十五万円となっております」
「そうか。では、明日の朝食だけ付けて貰うことは出来るか。今日の夕食は用意しなくていい」
「ええ、そう言った事も出来ます。それですと、一泊、十二万五千円となります」
「そうか。それじゃあ、一泊で頼む。部屋を用意してくれ。支払いはここでするのか」
「かしこまりました。いいえ、支払いは当宿のチェックアウト時に支払っていただきます。では、こちらがお部屋の鍵になります。お部屋は、そちらの階段を三階まで上がって頂き、左に曲がった突き当りのお部屋になります」
「ああ、わかった。ありがとう」
エルクは、『旅人の足休め亭』の受付係から部屋の鍵を受け取るとルリを連れて一度部屋に行くために玄関ロビーの中ほどにある大きく中々立派な階段を三階まで登って行った。
エルクとルリは、受付係の男から受け取った部屋の鍵で部屋の鍵を開けて部屋の中に入ると、中には城に置いてあるベッド程ではないがまあまあ大きいベッドが二つと少し離れた所に数人が座れる大きさのソファーとテーブルが置いてあった。
「お、料金の割には中々いい内装じゃないか。何だか落ち着いた感じの部屋だし良いんじゃないか」
「そうね。たまにはこう言う所に泊まるのも良いかも知れないわね。まあ、一番落ち着くのは箱庭の城にあるエルクの部屋だけどね」
「お、おお、そ、そうか。……さてと、ルリ、外出するぞ。酒場で夕食を取りつつ情報収集だ」
エルクは、部屋についている大き目の窓から外を覗いた後、窓を開けてここから少し離れた大通りの様子を伺ってからルリにそう言って、ルリを連れて部屋を出た。
部屋の鍵を受付係の男に預けて少し外出することを伝えたエルクとルリは、宿を出ると手を繋いで大通りまで出た。
「お、まだ少し混雑しているけど、さっきよりは人の数も大分少なく成って来ているな。よし、食堂や酒場を探すとするか。ルリ、行こう」
そして、エルクは、暫く大通りをルリと手を繋いで歩いていると、少し先の方に結構にぎわっている酒場を見つけた。
エルクとルリは、その酒場で食事と情報収集をするためにその酒場に向かおうとすると突然、前方から歩いて来た三人組の冒険者風の酔っ払いに声をかけられた。
「お、中々可愛い嬢ちゃん連れてるじゃないか。なあ、あんちゃん、その子俺らに一日貸してくれよ。一日存分に楽しんだら返してやるからさ。なあ、良いだろ。まあ、明日あんちゃんの元に戻って来た時は、その嬢ちゃんの穴はガバガバになってもう使い物にならなくなってると思うけどな。ガハハハ」
「はあ~、何を言っているんだ。あんたたちは。そんなことする訳ないだろ。ルリ、こいつ等は無視してさっさと酒場に行こうぜ。酔っぱらいは無視するに限る」
「そうね。相手するだけ時間の無駄だわ」
エルクとルリは、そう言うと酔っぱらいの冒険者風の男たちを無視してその場を去ろうとした。
しかし、その三人組を通り過ぎて酒場に向かおうとしたエルクの肩を力強く掴み引き留めようと三人組の男たちが掴みかかって来た。
「おい。ちょっと待てや。何ガン無視して素通りしようとしてんだよ。良いからさっさとその嬢ちゃんをこっちに渡せって言ってんだよ。俺達の言う事を聞かないと、てめえ殺すぞ」
「はあ~、わかった、わかった。それじゃあ取りあえず、そうだな。あそこの路地裏で話をしようか。ルリ、俺は少しこの人達と話をして来るから先にあの酒場に行っててくれるか」
「ええ、わかったわ。さっさと終わらせて早く来るのよ」
「ああ、わかってる」
そして、酒場にルリを先に行かせたエルクは、「何であの嬢ちゃんをどこかに行かせるんだ」と喚き散らす酔っぱらいの三人組の腹部を素早く殴打して、悶絶している酔っぱらい三人組の服の襟を掴んで路地裏まで引っ張って行った。
「さてと、おい、お前ら、よくもその汚い口で俺のルリに声を掛けてくれたな。お前ら目障りなんだよ。もう二度とナンパする気が起きない様にきっちりわからせてやるから覚悟しろよな」
エルクは、酔っぱらい三人組にそう言うと、仙術、幻の型、悪夢の声を三人組に聞かせ三人を強制的に眠らせると、三人それぞれに地獄の様な悪夢を見させて、三人をその場に掘地してエルクはルリの待つ酒場へと向かって行った。
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