第56話

 冒険者ギルドでオーガ十五体の討伐の依頼を受領したエルクとルリはマスイの街を出て領都ロクス方面にある迷いの森に向かって自前の魔道馬車を走らせた。


 マスイの街を魔道馬車で出発してからおよそ五時間、現在の時刻は丁度、夜に差し掛かる十八時を回った頃、エルクとルリは領都ロクスに向かう街道沿いにある迷いの森まで後一日と言う距離にある宿場町を訪れていた。


「ルリ、今夜はこの宿場町に泊まって行くぞ。微々たるものだけど、溜まって行くばかりのお金を少しは消費したいからな。それにこういう街の酒場や宿には色んな所から旅人とか冒険者、商人がやって来るから今世界中で起きている事件などの情報や世界情勢を収集する絶好の機会なんだよ。それにこの俺達の受けた依頼の被害状況なんかも知ることが出来ると思うしな」


「わかったわ。でも寝るのは箱庭の城の寝室で良いのよね」


「ああ、お金を消費するために宿に泊まるだけだから、その後は、いつも通りに城の食堂で夕食を取った後は城の寝室で寝るだけだけど、今回は寝る前に夕食後、食休めをした後に情報収集をするために酒場に行くことだな。ルリ、お前は別に酒場にはいかなくても良いけど、どうする」


「そうね。たまにはお酒を飲むのも良いかも知れないわね。あ、も、勿論、情報収集するために酒場に行くんだからね。絶対に生まれてからまだ一度も飲んだことが無いお酒を飲んでみたくて酒場に行きたいなんて言った訳じゃないからね」


「はいはい。今回はそう言う事にしといてやるからそう取り乱すなよ。周りの人達から変な子だと思われてしまいぞ」


 エルクに指摘されたルリは、とっさに周りを見回して周りの通行人の生暖かい目などの目線を感じて、只でさえ顔を赤くしてエルクと話していたルリの顔は更に真っ赤になり頭から湯気を出していた。


 そして、顔を真っ赤にし頭から湯気を大量に出したルリは今日着て来ていた白のワンピースの裾をその小さな手で握りしめると、目線を下にして少しの間ぷるぷると体を小刻みに震わせていたが、暫くするとルリは、目線を上に上げると頬をリスの様に膨らませながら涙目でエルクを見つめながらトテトテとエルクに近づきガバッとエルクに抱き着くと顔をエルクのお腹に埋もれさせて暫くじっとしていた。


「ルリ、少しは落ち着いたか」


 ルリがエルクに抱き着いてから少ししてそろそろ落ち着いたかなと思ったエルクがルリに「少しは落ち着いたか」と聞くと、ルリは声を出さずに首を縦に振って答えた。


「そうか、じゃあ、今夜泊まる宿を探しに行くぞ」


 エルクはそう言ってルリと手を繋ぐと宿を探しに街中を行き交う人混み中にまぎれて行った。









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