第16話 暗殺集団サンクリット王国南部責任者視点

 時は遡りエルクがエルスハイド辺境伯家に生まれてから丁度二年たった頃、サンクリット王国、南の辺境、国境付近の山奥にある洞窟の奥に人工的に作られた大きな空間で黒装束の集団が集まって会議を開いていた。


「それで、本部での儀式は成功したのか。本部とこの隠れ家とでは大分距離がある。情報がここまで届くのには時間がかかるからな。この隠れ家に着いて早々で悪いが結果の報告を頼む」


 このサンクリット王国、南部の責任者である男の要請を聞きたった数分前にこの隠れ家の中に入って来たまだ年若い男は、責任者の他十人ほどが腰を掛けている三日月型の会議机の前まで行き報告し始めた。


「はっ、儀式の結果、邪神様がこの地上に降臨なされるのは約十八年後ということがわかりました。そして、邪神様の降臨に先立ち魔王様が約十五年後に復活なされるとのことです。それで、もう一つ、五年後に邪神様の脅威となる存在がこの世に生まれるとのことです。その者の名は、エルクセール・エルスハイドと言いまして、今現在、年齢は二歳で、エルスハイド辺境伯家の次男です」


「そうか、サンクリット王国随一の武家であり現当主とその妻は剣聖と聖女、長兄は今年剣聖(仮)のジョブを授かったと言うではないか、しかも一家全員揃って人としても出来が良いと着ている。そして、何よりあの家の警備は王城並みかそれ以上と言われているから屋敷に忍び込んでその次男を暗殺するのも難しいだろ。……仕方ないな。組織に所属している女の構成員を数人あの屋敷に潜入させて、時間をかけてエルスハイド家の者たちを洗脳していくとするか。よし、方針は決まった。直ぐに潜入させる構成員を選抜してくれ。では解散」


 責任者の男がそう言うとその場にいた者たちは洞窟を出て行きその場には責任者の男だけが残った。


「少し時間はかかってしまうが、邪神様が復活なさる前に少しでも脅威となる可能性のある者は排除しなければならないしな。ここは我慢して慎重にことを運ぶとしよう。全ては邪神様のために」


 責任者の男は、そう言うと席を立ち静かに隠れ家の洞窟を出て本部のあるガドブック公国へと向かって行った。


 エルスハイド家に間者を潜入させることを決めてから一か月後、責任者の男はやっと選抜し終えた間者たちを数人エルスハイド家に潜入させた。


「ふ~、やっとここまで来たか。後は、潜入させた構成員の者たちにエルスハイド家の者たちを少しづつ洗脳させて、五年後の洗礼の儀の後にエルクセール・エルスハイドを殺す様に仕向ければ、邪神様の最も脅威となる者を排除することが出来る。後に残る勇者や賢者、剣聖、聖女などの厄介な者たちは邪神様と魔王様が揃えばどうとでも成るだろうからな。それでは、エルクセール・エルスハイドが死ぬまで私は傍観者に徹するとしようか」


 責任者の男は組織の本部に設けられた自室の椅子に座って酒を飲みながらそう呟くのであった。


 

 そして五年後、エルクが行方不明になって数日たちエルクの死体を見つけることが出来なかった暗殺者集団のリーダーは、サンクリット王国南部責任者である男に用済みとなったエルスハイド辺境伯家の者たちにかけていた洗脳を解いておくように指示を出した。


 サンクリット王国南部責任者の男はリーダーに指示された通りにエルスハイド辺境伯家の者たちにかけていた洗脳を解くように辺境伯家に潜入していた構成員に命じると次の作戦の準備に取り掛かった。


 サンクリット王国南部責任者の男に命じられた構成員はその日の夜中、辺境伯家の者たちが皆、寝静まったのを確認すると密かにかけていた洗脳の呪いを解いて誰に見つかることも無く辺境伯家の屋敷を出て行った。








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