第20話
村長邸で夕食をご馳走になることになったエルクたちは村長邸のリビングにみんな集まって食事をしていると徐々に洞窟で助けた村人たちやブロンたちが助けた村人たちが集まって来て宴会の様な状態になっていた。
「村長、改めて思うけど大勢で食べる食事は格別だな。こいつらと出会ってから改めて仲間の大切さっていうやつを実感してさ。今思うと前にいたパーティーでは俺って孤立してたんだなって、一人だったんだなって気付かされるんだよな。だからさ、俺はこいつらに結構感謝してるんだよね。まあ、こいつらに俺の気持ちが伝わっているかどうかはわからないけどな」
エルクは、お酒を飲んで酔いつぶれているルリやブロン一家を見ながら村長に語りかけた。
「そうですな。気持ちと言うのは言葉にして相手に伝えなければ決して相手に伝わる事はないです。先ずは、エルクさんのその気持ちを包み隠さずみなさんに伝えてみることですな。私が見たところちゃんと伝えればみなさんは答えてくれると思いますよ。まあ、自分勝手な考えで一方的に気持ちを伝えるのは論外ですが」
「ふん、村長、それはあの青年の村人の事を言っているのか」
「ええ、あやつももう少し大人になってくれると良いのですがね」
そして、宴会状態となった食事は夜中の十二時にお開きとなった。
食事を終えたエルクはブロン一家を起こして箱庭の中に戻らせると未だ眠っているルリを抱えて今夜の寝床として借りた部屋へと戻った。
「さてと、俺も寝るかな」
エルクは眠りに就く前に部屋の入り口である戸の前と窓の前に仙術の精霊樹の束縛陣を設置して侵入者を束縛するようにセットするとベッドに入り眠りに就いた。
エルクが眠りに就いてから数時間が経ち時刻は深夜の三時を過ぎた頃、一つの人影が村長邸に近づいて来た。
「ふふふ、ルリさん待っててね。今からオレが迎えに行くからね。オレの家に戻ったら楽しくて気持ちいい事いっぱいしようね」
その男は気持ち悪い笑みを顔に張り付けながら村長邸の裏手に回り裏口から中に侵入した。
男は順調に村長邸の二階まで上がり遂にエルクとルリが眠っている部屋の前までやって来た。
男はズボンのポケットから縄と針金を取り出して部屋に侵入する準備を整えると身を屈めて針金を鍵穴に差し込み音がならない様に慎重に数回針金をカチャカチャと動かして鍵を開けると戸を開け静かに部屋の中に足を踏み入れた。
しかし、男が足を踏み入れた瞬間、足元が鈍く光り出しそこから魔法陣らしきものが現れその瞬間植物のツタの様な物が男の体や口に絡みついて来て男は拘束され身動き一つ取れなくなった。
翌朝、エルクとルリが殆ど同時に眠りから覚めて目をこすりながら上半身を起こすと目の前には植物のツタが体中に絡みついて身動きが取れなくなり色々な汚物を垂れ流して静かに泣いている救出時にエルクに絡んで来た青年の姿があった。
「え~と、お前そんな所で汚物垂れ流して何をやっているんだ」
エルクが青年に尋ねるが青年は口をツタで塞がれているため話す事が出来ず「ん、ん、ん~」としか声を出す事が出来なかった。
エルクとルリがこの状況をどうしようかと悩んでいると朝食の時間になったのか村長がこの部屋までエルクとルリを呼びに来た。
「エルクさん、ルリさん、朝食の準備が出来たので下のリビングまで」
村長がそこまで言って戸を開けると自分の目に飛び込んで来た余りにも酷い光景に村長は言葉を失ってしまった。
「あ~、えっと、村長、一応言っておくけどこの状況は俺たちがやった訳じゃないぞ。俺たちが起きたら既にこう言う状況になっていたんだ。正直、俺たちも困惑している。まあ、大体は察しがつくけどな」
「ええ、私にも大体察しは付きます。この度は私たちの村の者が大変な失礼をあなた様方にはたらいてしまい誠に申し訳ありません」
村長が正座をしてエルクたちに謝罪をしたのでエルクとルリは慌ててベッドから出て青年を避けながら村長の下へ行き直ぐに立たせた。
「何も村長が謝らなくて良いんだよ。謝るなら彼が謝るのが筋ってもんだよ」
その後、この青年の両親を彼の家から呼んで来て一緒に彼をツタを外して下ろし引き取ってもらった。
勿論、彼がまき散らした汚物は彼の両親が綺麗に片付けてくれた。
彼は両親に引き取られて村長邸を出て行く時も態度を改めることなく終始「ルリさんに相応しいのはこの俺だ」と豪語していた。
青年との一軒にひと段落したエルクとルリは村長邸にて朝食をご馳走になっていた。
因みにブロン一家は今朝は箱庭で食事をするそうでここにはいない。
朝食を食べ終えたエルクとルリは部屋に戻ると荷物をまとめてマスイの街へと帰る準備をしていた。
「エルクさん、ルリさん、この度は我々を助けて下さり誠にありがとうございました。こちらサインをした依頼書です。道中お気お付け下さいね」
「ああ、ありがとう。この村は、まあ、色々あったけど、それを除けばいい所だったよ」
そうして、エルクたちはエスト村をあとにした。
因みにエスト村を出る時、例のあの青年がこちらに来て「ルリさんをここに置いていけ」とか言い出してひと悶着あったが、その場で父親に殴り飛ばされ気絶していた。
「おっさん、程々にな」
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