第19話

エルクとルリがゴブリンたちに囚われていた村人たちを連れてエスト村に戻って来るとブロンたちが村の門の手前でエルクたちを出迎えてくれた。


「お前たちご苦労だったな。お前たちが保護した村人たちは今どうしている」


「はっ、我々が保護した者達はこの村に戻ってきた後は自分の家に戻り休息を取っております」


「そうか。それじゃあ暫くは何もないと思うからお前たちも休むといい」


「わかりました。では自分たちは箱庭で待機しておりますので、何かありましたらお呼びください」


 ブロンはエルクにそう言うと箱庭のゲートを開け家族を連れて箱庭の中に入って行った。


 ブロンたちに休む様に言ったエルクはブロンたちが箱庭の中に入るのを見届けた後、保護した村人たちを各自の家に帰した後、ルリを連れて村長と一緒に村長邸におもむいた。


 エルクとルリが村長邸に訪れている時ルリに一目ぼれしてエルクに喧嘩を売って来た村人の青年は一人自分の家の自室で悶々としていた。


「何でルリさんはあんな弱そうなやつと一緒にいるんだ。絶対に俺の方があんなやつよりルリさんに相応しいのに。……そうだ。今夜はルリさんもついでにあいつも村長の家に泊まるはずだから夜中にルリさんが泊まっている部屋に忍び込んで襲っちゃうか。うん。良い考えだな。ルリさんに相応しいのは俺なんだ」


 この青年はルリの事しか考えられなくなっていて自分がいかに危険な思考をしているのか既に正常な判断が付かなくなっていた。



 村長邸に訪れているエルクとルリは村長と夫人にリビングに通されてお茶と茶菓子を出されて持て成しを受けていた。


「この度はゴブリンたちから助けていただき誠にありがとうございました。折角ですので今日はこの家に泊まって行って下さい」


「ええ、夫の言う通りです。誠にありがとうございました。今日は私が料理を振舞いますよ」


「あ、それと、洞窟ではこの村の村人が大変失礼な態度を取ってしまいすいませんでした。後であの者にはきつく説教をしておきますので、何卒ご容赦下さい」


「ああ、あの青年の事か。俺はあの事は全く気にしていないから問題ないよ。ルリはどうだ」


「私も気にしてないわ。あんな些細なこと気にするだけ無駄だもの」


「と言うことだから本当に気にしなくて良いよ」


 その後エルクとルリはあてがわれた一室で夕食の時間までゆっくりとくつろぐ事にした。


 それから二時間後、エルクたちがいる一室に村長が夕食が出来たとエルクたちを呼びに来た。


「大変お待たせいたしました。夕食が出来ましたのでどうぞリビングまでお越しください。四人のお連れの方の分も用意しておりますので」


「え、ブロンたちの分まで作ってくれたんですか。ありがとうございます」


「いえ、いえ、我々はあなたたちに助けていただいたんです。このくらい何て言う事ありませんよ」


「そうですか。では俺はブロンたちを呼んできますので少し待っていて貰っても良いですか」


「ええ、どうぞ。どうぞ。ここでお待ちしておりますので」


 村長に断りを入れたエルクは、その場で箱庭のゲートを開き箱庭の中に入って行った。


 箱庭の中に入ったエルクはブロンたちを呼ぶために操作パネルで彼らの居場所を調べた。


「あいつら、山に戻っているのか。あそこまで行くのは面倒くさいな。手っ取り早いし召喚しちゃうか」


 山まで行くのが面倒だったエルクはテイムの能力のの一つでテイムしている従魔を自分の所に呼ぶことが出来る召喚を使ってブロンたちを呼び寄せた。


「おお、主殿、突然どうしましたかな」


 ブロン一家がエルクの目の前で目を丸くして驚いている。


「ああ、突然すまないな。エスト村の村長と夫人が俺とルリ、そしてお前たちに料理を振舞ってくれるそうだから呼びに来たんだけど、お前たち、まさか既に何か食べてないよな」


「ええ、まだ食事はとっていませんが」


「そうか。それじゃあお前たちもこれから村長邸にお邪魔して夕食を頂くといい。折角お前たちの分も料理を作ってくれたんだからな。頂かないというのは失礼にあたるだろう」


「そうですな。それでは、村長邸にお邪魔するとしましょう」


 そして、エルクはブロンたちを連れて箱庭を出て行った。 







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