第3話

 無事に九階層を踏破したエルクは、階段を下りてボス部屋がある十階層に辿り着いた。


「よし、十層のボスならこの先でも戦力になってくれるだろう。問題はちゃんとテイムできるかどうかだけど、元々ここには最後の賭けとして来たんだから、例えここでテイムに失敗してボスに殺されたとしても仕方ないよな。父さんも母さんももう死んでいるからオレが死んでも悲しんでくれる人なんてもういないしな。さてと、腹をくくってボス部屋に挑むとするか」


 腹をくくったエルクは、十層のボス部屋の扉を開くために扉に近づき扉に手を触れた時、突然足元に魔法陣が現れて光輝いたかと思うと、次の瞬間、エルクは十層のボス部屋の扉の前ではなくどこかの大きな部屋の中へと転移させられていた。


 その部屋は、広すぎて薄暗いので奥の方を確認することが出来なかった。


 エルクは、転移先である部屋の中を壁伝いに調べるために動こうとすると急に部屋の奥の方から少し低い女性の声が聞こえて来た。


『あら、こんなところまで人が来るなんて初めてね。お前こんなところまで何しに来たの』


 その声と共に部屋の中が一気に明るくなり、エルクに話しかけて来た者の姿があらわになった。


「な、この銀色に輝く体毛にその金色の瞳、伝説の神獣として歴史書に出て来る聖獣フェンリルなのか」


『あら、私のことを知っているの。まさか伝説になっているとはね。これは驚きだね。で、もう一度聞くけど、お前はここに何しに来たの』


「ああ、俺は、魔獣使いでな。ここには従魔を得るために来たんだけど、十階層のボス部屋の前で罠にはまって、それで、ここに転移して来たって感じなんだ」


 エルクは、内心焦りまくりのパニック状態になりながらも手に汗握りながら聖獣フェンリルにここに来た理由を話した。


『あら、あら、道理でここまでたどり着いた者にしては全然強さを感じないと思ったら、そう言うことだったのね。何と言うか、お気の毒としか言えないわね』


「うっ、気を使わないでくれるかな。余計に心にダメージを受けるから」


『あら、それは失礼しちゃったわね。あ、そうだわ。お前、先ここには従魔を得に来たって言っていたわよね。だったらこの私をテイムしてみない』


 エルクが、フェンリルの気づかいで心にダメージを受けていると、フェンリルがエルクに信じられない提案をして来た。


 フェンリルの信じられない提案を聞いたエルクは、思わず聞き返してしまった。


「え、な、なに、もう一度言ってくれるか。余りにも信じられない言葉があんたから聞こえて来たんだけど、俺の聞き間違いだよね。そうに決まってる。聖獣フェンリルともあろう者が、こんな弱小の人間の従魔使いにテイムしてみないかなんて言う訳が無いんだ。そうこれは俺の聞き間違いなんだ」


 エルクが、小声でブツブツと言っていると、フェンリルは改めてエルクに話しかけて来た。


『仕方ないわね。じゃあ、これが最後だからね。聞き逃すんじゃないわよ。コホン、この私をテイムしてみない』


「ははは、さっき聞こえた言葉は、俺の聞き間違いじゃなかったんだな。それじゃあ聞かせてくれ、フェンリル、あんたはどうして俺にテイムされても良いと思ったんだ。その理由を教えてくれないと俺としてもあんたを気持ちよくテイムすることが出来ないから、是非聞かせて欲しい」


『ええ、良いわよ。私があなたになぜこんなことを言ったかと言うとね。……寂しかったのよ。ここはアダマンタイト級ダンジョン『神狼の住処』の最下層の二百層だからね。このダンジョンが出来てから攻略者がこの最下層まで来たことが一度もなかったんだよ。私は生まれてから一度も人どころか生き物に会った事さえなかったんだ。もう正直なとこ寂しすぎて心が疲れ切っていたところにお前がやって来てくれたんだ。お前と一緒にいたい一緒に行動したいと思っても仕方ないじゃないか。お前はそう思わないか』


「確かに、わかったよ。あんたを一緒に連れて行くよ。じゃあ、あんたにテイムを発動するけど、俺にもどうなるか、正直なところよくわからない。何しろ俺は魔獣使いのジョブを授かって十年一度もテイムを成功させたことが無いからな失敗しても俺のことを恨むんじゃないぞ」


 エルクは、フェンリルにそう言うと、フェンリルに向けてテイムを発動させた。


【エルクが聖獣フェンリルにテイムを実行しました。……テイムが成功しました】


【聖獣フェンリルをテイムしたことにより、エルクのジョブ魔獣使いが聖獣使いに進化しました】


【ジョブが聖獣使いに進化したことにより、スキル神獣の箱庭を獲得しました。なお、聖獣フェンリルをテイムしたため新たにスキル神眼を獲得しました】


【なお、これより従魔が倒した魔物の経験値は二倍となって主であるエルクに与えられます】


 エルクは、余りの情報の多さに激しい頭痛を起こしてその場で気絶してしまうのだった。







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