記憶喪失の魔獣使い、ゴールド級パーティを追放されたんだが、ジョブの魔獣使いが進化したので新たな仲間と成り上がる

グリゴリ

第一部 サンクリット王国編

第1話

 今、とある酒場で冒険者パーティーの仲間たちから追放されようとしている情けないエルクと言う名の男がいる。


 十年前、ミクロス帝国の南方を守護する辺境伯領の辺境の村ロストのヘルス夫妻に記憶喪失の状態で保護され、引き取られてから十年の月日が経ちオレは今、サンクリット王国の北部を守護するマロクス辺境伯領の領都ロクスで村で出来た幼馴染四人とパーティーを組んで冒険者をしている。


 因みに十年たっているがエルクの記憶は未だに戻っていない。


「エルク、悪いがお前はここまでだ。従魔が何時まで経っても出来ない従魔使いなんてパーティーにいても邪魔なだけだからな。今までパーティーに置いてやってただけでもありがたく思えよな」


 エルクにこんなことを言って来ているのはエルクの幼馴染でこのパーティーのリーダーであるミゲルだ。


 こいつはエルクたちがまだ村にいた時から何度もエルクに突っかかって来た、とても面倒くさいやつだ。


「何でだよ。ミゲル。俺は確かに従魔はいないけど、その代わりにスキルの無限収納を使ってみんなの荷物を全部持ってるし物資の調達とか雑用は今まで全部俺がやっていたはずだ。だからパーティーにも少なからず貢献していたはっ」


 エルクが言葉を全て言い終わる前にミゲルがエルクの言葉をさえぎって話し始めた。


「何が俺も少しはパーティーに貢献していたはずだだよ。そんな風に思っていたのはお前だけだよ。はっきり言ってお前の存在は目障りだし迷惑なんだよ。それにお前の追放はパーティーメンバー全員が了承済みだ。今更くつがえったりしないから、さっさと出ってってくれよ。ここにもうお前の居場所はないんだよ」


 エルクは、ミゲルの他のメンバーも見るがみんな頷くだけで何も言うことはなかった。


「ここにはいないみたいだけど、マリアもこの事には賛成していたんだな」


「ああ、当たり前だろ。マリアもお前のことを迷惑だって言っていたよ」


「そうか、わかった。今まで世話になったな」


 そして、エルクが酒場を出ようとするとミゲルが呼び止めて来た。


「おい、おい、俺たちの荷物を持ったまま行こうとしてるんじゃねえよ。お前が付けている装備と所持金はくれてやるから無限収納に入っている荷物は全部ここに置いていけよな」


「っわかった。くれてやるよ」


 エルクは、無限収納の中に入っていた荷物と大樽五つ分の水を酒場の床に全てぶちまけると、テーブルの上に酒代を置いて酒場を出て行った。


 酒場を出たエルクの背後からはミゲルたちの怒鳴り声と酒場の女将の怒鳴り声が聞こえて来たが、エルクはその声を無視して夜の街へと歩き出した。


 エルクは酒場を出ると今まで泊まっていた宿を出て手頃な値段の宿を取り直してその日は直ぐに眠りに就いた。


 


 待合室で父上たちと合流すると早速父上と母上がステータスカードを見せる様に言って来たので、エルクはステータスカードに魔力を流してステータスを父上たちに見せた。


〖こ、これは……あり得ない我が家から不遇職を授かる者が現れるなんて〗


〖あ、あなた、何、冗談を言っているのですか。な、こ、これは〗


 エルクのステータスカードを見て絶望した様な顔で立ち尽くす父上からエルクのステータスカードを奪い取って確認した母上もステータスカードの内容を見ると、カードを取り落として心底失望したと言う様な目でエルクを見据えて来た。(あ~、俺は、また捨てられるのか。)とエルクは思った。


「はっ、何だったんだ今のは、ゆ、夢か。何か気分の悪い夢だった気がするな。さてと、パーティーの脱退届を出さないといけないから冒険者ギルドに行くかな」


 そして、宿を出たエルクは、露店で串肉を買って食べながらギルドへと向かった。


 ギルドに着くとエルクは、空いているカウンターの列に並んで自分の番が来るのを待った。


「次の方、どうぞ」


「パーティーの脱退届を出したいんだけど、用紙くれる」


「ああ、エルクさんですか、はいはい脱退届ですね。ちょっと待ってくださいね。それにしてもやっとあのパーティーを脱退されるんですね。だってあのパーティーにエルクさんは相応しくありませんからね。それで、今後はどうするんですか。冒険者は辞めるんですか」


 エルクは、この受付嬢の言い様に腹を立てながらも冒険者になってからずっとアイアン級の自分ではここで何を言い返しても意味はないと思い返事はせずに受付嬢が渡してきた脱退届の用紙に必要事項を書いてから受付嬢に渡すと、エルクは冒険者たちの自分に対するあざけりの言葉を背中越しに聞きながら直ぐにギルドを出た。


 ギルドを出たエルクの心は盛大に荒れていた。


「くっそ、今に見ていやがれあいつら。俺だって従魔さえいれば、こうなったらアダマンタイト級ダンジョン『神狼の住処』に潜って絶対に強い従魔を手に入れてやる。そうと決まれば早速、物資の調達をしないとな。まずは、携帯食を含めた食料を買いに行くか。あ、それとテントも大分ボロボロに成って来てるし新しいのを買うかな」


 そして、小一時間かけて必要な物資を買い込んだエルクは、その足でマロクス辺境伯領の外れにあるアダマンタイト級ダンジョン『神狼の住処』に向かった。


「ここがマロクス辺境伯領にあるアダマンタイト級ダンジョン『神狼の住処』か、『死の森』はフィールド型のダンジョンだったけど、ここのダンジョンは、洞窟型のダンジョンなんだなあ」


 エルクは、そんなことを言いながらダンジョンの中へと潜って行った。






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