I'm Parker!!

@cloudy2022

救世主はパーカー!?

皆は人生で一番不幸だと思ったことはあるかな?

私はね、あるよ。

一番そう思ったのは―――母さんが死んだときだった。

いつも通り母さんと一緒に晩御飯の材料を買うために近くのお店に行こうとしてた時だった。

その時の私はのんきにお腹を鳴らして、早くご飯が食べたいって思いながら歩いていたんだ。

そんな風にいつもと変わらない日常が続くと思ってた。


――突然、地面が揺れて次の瞬間には母さんが地面から飛び出してきた「化け物」に食べられるなんてことが無ければ……。


私も母さんと一緒に食べられそうになったけど、母さんが突き飛ばしてくれたおかげで何とか逃げられた。

でもその時に地面に落ちてた石で足を傷つけてしまったせいで走ることが出来なかった。

だから私は必死に逃げようとしたんだけど……途中で転んでしまった。

目の前には口を大きく開けて迫ってくる化け物の姿があって……もうダメだって諦めかけたときに誰かに助けられた。


それが私の父さん。

超常生物――「怪物」と戦う人。

父さんは私を抱えて安全な場所まで運んでくれた後に怪我をした足を治療してくれた。

「大丈夫か?」そう声をかけてくれた父さん。

突然なことに気が動転していた私はそんな父さんに「ママは?」って聞いたの。

だけど自分でも見ていたように、目の前で食べられちゃったお母さんはもう戻ってこない。

それを理解した私は大泣きしちゃって……父さんはとても困っていたと思う。

だけど優しく私の頭を撫でてくれてこう言ったんだ。


――お前の母さんの分まで俺が守るから安心しろって。


それからは大変だったなぁ。

今まで見たこともないような大きな怪物や小さな怪物と戦っている父さんの姿を何度も見ることになった。

そして気付いたら私は父さんに憧れていたんだ。

いつか自分もあんな風になりたいなって思って……父さんの後を追うようにして同じ道を進んだ。


そして――


「………………」

「グロロロロロ……」


今日に至るわけだよ。

夕暮れ時の路地裏にしりもちをつく私と、そんな私をのぞき込みながら舌なめずりをする巨大な怪物。

怪物の大きさは十メートルなんてものじゃなくて、二十メートル以上はあるんじゃないかな?

カエルっぽい形をしていて、全身が緑色の皮膚に覆われている。

目は大きくてギョロッとしているし、長い舌からはヨダレのようなものが流れ落ちていて……とても気持ち悪い見た目をしている。

この怪物の名称は――「フロッグマン」。

その名の通り蛙のような姿をしているけど、カエルそのまんまというわけではない。

全体的なシルエットはカエルだけど、人間のように二足歩行も可能な怪物だ。

そんな怪物が、私を食べようとのぞき込んでいた。


「あ、あぁ……」


思わず後ろに下がろうとするが、すぐに背中に壁を感じてしまう。

追い詰められた。もう後がない状況に体が震える。

「なんで一人で怪物を見つけようなんて馬鹿なことをしたんだ」そう心の中で自分に悪態をついても、この状況は変わらない。

そんなことを考えてる間にも、怪物は大きく口を開け、私を丸のみにしようとしていた。

「あぁ……私の人生ここで終わりなんだ……」そう諦め、訪れる死に目を瞑って耐えようとした――


――その時だった。


「オラァッ!!」


グシャッ!!


「ギュベッ!?」

「……えっ?」


誰かの声とともに肉を潰す音と怪物の潰れるような声が響いた。

一瞬何が起きたのか分からなかった。

それに理解が追い付く間にも状況は変わっていく。


「気持ち悪いんだよこのカエル野郎!」


ドゴッ!


「ギュバァッ!!??」


また誰かの声と共に怪物の悲鳴が上がる。

そして、何かが衝突したのか建物が崩れる音も聞こえる。

一体誰がこんなことをしてるんだろうと思いながらも突然の出来事に目を開けられず、体は縮こまったままだ。

やがて数秒ほど経っただろうか。ようやく私は恐る恐ると瞼を開けることが出来た。

するとそこに広がってたのは……地獄絵図みたいな光景。

私よりも大きい怪物が、口元から内臓を垂れ流しながら息絶え、そして建物は崩れ、いささか見晴らしがよくなっていた。

そんな戦場となった場所の中心にいる私を、さえぎっていた建物がなくなったことで夕日が差し込んでくる。


そして、夕日は私だけじゃなく、私を助けた人……人?を照らし出した。


ふわふわと幽霊のように浮かび、輪郭の端っこは風にたなびいている。

逆光で黒く染められていても、その姿ははっきりと見えた。

私を助けてくれた人は――人のようで人ではない。

いや、輪郭としては人の部分だが、それも全身というわけではなく、なんというか……上半身だけだったのだ。


そう……そこにいたのは――


「ふぅ……大丈夫かいお嬢ちゃん? その様子じゃ大丈夫そうだ。あー、突然ですまないけど俺と契約してくんね?」


――ちょっとおしゃれな服屋で売ってそうな蛍光色のライン付きなパーカーだった。


「…………」

「ん? どうしたお嬢ちゃん? もしかして、俺のスポーティーさに目を奪われたk――」


ガシッ!


「……え?」


バカッ! ズボッ! ダッ!


「ちょ」

「やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい……!」


思わずその宙に浮いていたパーカー(?)をそばにあったゴミ箱にたたきつけるようにして、その場から逃げ出しただけで済んだ私を誰か褒めてほしい。

でもあの場から逃げ出すことしかできなかった。

だっていきなり怪物を倒しちゃう人が目の前に現れたと思ったら、それが不審すぎるというか奇怪すぎるパーカーで、いきなり私と契約しようだなんて言ってきたんだもん。

そりゃ逃げるよ。怖かったんだから。

すぐさまその場から逃げ出し、怪物駆除の隊員たちが来る前に家につこうと思っていた。

でも――


「人をゴミ箱に捨てて逃げるんじゃねぇえええええええええええええええ!!! 待てやぁああああああああああああああああああ!!!」

「いやぁあああああああああああああああああ!!!??? 来ないでぇええええええええええ!!!???」


――何故か私の後ろから追いかけてくるパーカー。

しかもめっちゃ速い。

後ろを振り返らずに全力で足を回転させた。


――今思えば、これが私の運命の分岐点だったかも。


よくわかんないパーカー……「パーカー」さんと出会わなければ私はあそこで食べられてた。


それは間違いないと思う。


だけど私が助かったのも、この出会いがあったからだとも思う。


だから、この時の私はこの選択が正解だったのか分からないけど、きっと後悔だけはしないと思う。


このあと私は……このパーカーさんと戦いの運命をともにすることになるのだから。

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