夏の夜に、雪女さん
御厨カイト
夏の夜に、雪女さん
「うーん……暑いなぁ…………」
ベッドの上でゴロゴロと体を動かしながら、俺は少し苛立ちを含んだ声でそう呟く。
まだ蝉の声がうるさく響く、そんな季節。
寝ようにも暑くて寝付けず、掛けていた布団も蹴っ飛ばしたからか今じゃベッドの下に落ちてしまった。
体も頭も「寝ようよ」と言っているのにも関わらず、外気温がそうはさせてくれない。
生憎クーラーも扇風機も壊れているからその外気温からの逃げ場も無い。
はぁ、まったく……明日も早いっていうのに……
「……大丈夫ですか?」
俺がそんな事を思いながらのたうち回っていると、隣のベットで寝ていた凛が声を掛けてくる。
「あっ、ごめん、起こしちゃった?」
「いえ、大丈夫です。丁度水を飲もうと起きただけですから」
「そう……ごめんね」
「そんな、謝らないでください。辛いのは君の方でしょうに……」
「あはは……まさかここまで暑くなるとは思っても無かったな」
「クーラーや扇風機も壊れてしまいましたからね。こんな暑さではいささか寝苦しいでしょう」
「うん、でもまぁ仕方ないからね我慢するよ」
少し苦笑いをしながら、俺は寝れないのを分かっていながらもベッドへと横たわる。
そんな俺の様子を見て、そして自分の体を見て何か思いついたのか彼女はこんな提案をしてくる。
「……ねぇ、そんなに暑くて寝付けないのなら、私の体貸してあげましょうか?」
「……えっ?」
「ほら、私って雪女じゃないですか。だから、体がいつも冷たいんですよ。なので、私と一緒に寝たらひんやりして気持ち良いのではないかと思いまして」
「あ、えっと……俺は有難いんだけど、凛は良いの?」
「えぇ、君がそんなに苦しそうなのに何も出来ないなんて嫌ですから。それに今回は幸いにも私の力で解決出来そうですし」
「……ホントありがとう。それじゃお願いしようかな」
「はい!」
そうして、嬉しそうに微笑みながら俺の横に入ってくる彼女。
「あっ、確かにひんやりしてて気持ち良い。これなら寝れるかも」
「それは良かったです。それではおやすみなさい」
「うん、ありがとう。おやすみ」
そう声を掛け、俺はやっと寝れそうだと一安心する。
そして、いざ寝ようと体をゴロンと横にした時、思っていた以上に近い彼女の顔にドキッとしてしまう。
さっきまでひんやりしていた体がポッと熱くなるのを感じたが、これは流石に夏の暑さのせいでは無いのだろう。
夏の夜に、雪女さん 御厨カイト @mikuriya777
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます