週末フードルの憂鬱

東郷みゆき

第1話

おはようございます。本日もよろしくお願い致します。


さゆみは店に出勤連絡をし、うちをでた。


週末フードルを始めて早3年。今では平日の仕事より楽しんでる自分がいる。


本日の予約は2人。お馴染みさん。今日も楽しくいちゃいちゃしましょ。



さゆみがフーゾクの道に進んだのは、息子の大学進学である。息子は中学の頃から塾に行きたいと言い出した。さゆみの毎月の給料から塾費用を捻出するのが厳しくなったのだ。

そこでカードローンに手をつけた。

カードローンの借入額は年収と同じくらいまで膨れ上がり、ついには債務整理するはめになってしまった。


母子家庭から大学へ進学させるのは厳しい。慰謝料や養育費をもらっている人と比べ、さゆみは自身で稼いだ給料だけで息子を育てている。

さゆみは次第にストレスから、毎晩飲んで帰るようになり、さらに借金が増していったのである。


借金返済のため、フーゾクの道へ。当初は有給を使って店に入ったり仕事が終わった後、店に入ったり、かなり詰めて出勤した。

そのおかげで毎月の借入返済は辛うじてできていた。

そこに新型コロナウイルスが発生、濃厚接触者になり外出不可となった。

コロナに罹患すると会社全体で責めるような体制だったこと、会社に迷惑をかけられないことから店も緊急事態発令が解除になるまで休むことにした。

そうなると、借入返済が厳しい。さゆみには毎月お小遣いをくれるパパがいたのだが、パパもコロナ渦のため、会わなくなりいよいよ借入の返済が難しくなってきた。

そんな時、債務整理のCMをネット広告で発見、即座に面会を申し出たのである。

会社を辞めるわけにはいかない、となると借金の減額は難しい。自身の給与口座をストップしなければならないからだ。

さゆみの場合、利息だけ免除することになった。年利15%だから、利息分だけでもかなりの金額だ。一体、総額いくら返さないと完済できない状況だったのだろう。

しばらく返済は法律事務所への手数料を支払って、その後返済がスタートした。


フーゾクも再開したが顧客はコロナ渦のため、しばらく戻ってこなかった。お客様の待機部屋もガランとしていて、特に夜は閑古鳥が鳴いていた。

借金が軽減できたとはいえ、大学で一人暮らしをしている子供の家賃もあり、二重に家賃を支払うのは正直きつい。

フーゾク界も厳しく、中には店を閉めざるを得ないところもあったようだった。


2度目のコロナ緊急事態宣言。またお店を数ヶ月休んだ。

コロナのおかげでジムにも行けなくなり、鍛えていた体はだらしなく太り、飲みにも行けなくなったことで徐々に食事量は増えて、服のサイズも変わっていった。

2度目の緊急事態宣言解除になってから、GoTo travelがスタート、お客様が戻ってきた。特にサラリーマンのお客様が増え、さゆみもその頃から出勤を土曜日に固定することにした。

たまに平日、有給を利用し出勤した。

平日は週末とは違うお客様がきてくれる。

いつもとは違うお客様に会うのも魅力的で、時々平日にお店に入ることもあった。


お客様の1人を好きになったことがある。しかしそのお客様には奥様がいる。だから、会いにきてくれるのをひたすら待つだけ。

ただ、もう1年以上会ってない。さゆみが平日出勤をやめてから、平日のお客様とは会えなくなった。それも仕方がない。いつかまた来てくれるのを待つだけ。


そんな中で、出勤日数が少ない割に、固定のお客様がつくようになっていった。

一年目はコロナの影響もあり、激減していたお客様が徐々に増え、長時間指名する人も出てきた。ただ、長時間指名してくれるお客様は、店外で会いたいと言ってくる。

ご家庭もある人だ。愛人になれと言ってくる人もいた。

さゆみは愛人は望まない。パパはいたが定年後は給与が減ったのか、お手当は激減した。先の見えている人と個人的に付き合うと、お手当が減れば減るほどタダで会おうとしつこく連絡してくることは経験済み。それなら、時間給を確実にもらう方が有り難い。

店外で会いたいと言ってくる人は来なくなっていった。何人かいたが、自分だけのフードルを飼いたいのだろう。さゆみは常連客を増やしたいだけだ。全員丁寧にお断りをした。


フードル2年目。土曜日確実に出勤したいのに、昼の仕事が忙しく、土曜日に会社の仕事が入るようになった。

平日に振替休日をとろうにも、平日は平日で会社から連絡が入るため店に出ていても落ちつかない。

働いても時間外手当とフードルの仕事は比べようもないほど違っていた。

何がなんでも店に入りたかった。

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