河馬雀
菊池ノボル
東1局
「今日はカバを連れてきました」
いつものようにディスコを繋げてネト麻の友人戦を始めると、ヒーちゃんが開口一番そう言ってきた。ヒーちゃんは真面目な男だ。前回の友人戦で三連続ラスの上、最後はド派手に役満を振り込んで負けたことを自分なりに考え、対策してきたに違いない。
「カバと言ってもコビトカバじゃないですからね。デカい方のカバです。体長は4メートルくらいですかね。いま隣でもしゃもしゃスイカを食ってますよ」
「スイカを食ってる姿はYoutubeの動物園の動画で見たことあるなあ~。カバのデカい口にスイカを放り込むと、気持ちよく食べてくれる奴だよね」
「おっ、さすが獅ニキはお目が高い。カバがスイカを丸ごと食う姿は見てて爽快ですもんね」
「じゃあ、なんだ? 今日はあのスイカみたいに俺らを食おうって言うのか?」
「ハハハ、ジラさんもそんな初っ端からイキり立たないでくださいよ。それを目指して頑張りますってだけで」
「全くどんだけ暇人の集まりなんすか! 麻雀の解説動画を見ないでそんな動画ばかり見てるから勝てないんすよ!! 先制リーチを食らえ!!!」
東1局。先制はΨくんだった。
彼はリーチが出来ればほとんど曲げてくる打撃型だ。愚形の可能性も大いに有り得るが、流石に4巡目のリーチとあっては当たり牌など読みようも無い。しかも親。
手格好も良くないため、ど真ん中の現物を切って降りる他なかった。獅ニキも同じくベタオリ。
だが、ヒーちゃんは違った。親リーチの一発で無筋の赤5索を切ったのだ。
「えっ、クリックミスすか!? 一発目から随分強気過ぎすよ~」
「いくら巨躯のカバと言えど、アフリカの大自然には様々な危険が潜んでいます。そのような命を落とすことに直結する危険に比べたら……こんな赤5索など危険の内には入りません!」
その宣言通り、後1枚無筋を通していったところで、ヒーちゃんの追っかけリーチ。それにΨくんが小さく「くっ……」と言葉を漏らした辺り、やはり愚形だったのだろうか。
2巡後、ヒーちゃんのアバターからツモの一声が発せられる。手格好は2-5-8萬の三面張。文句の無い追っかけでの勝利だった。
「まずは先制、ですかね。カバの最高時速は40km以上。そう簡単に逃げ切れると思わないでください」
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