趣味探しを無双せよ6

遅くなり申した

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「い、色々って何を?」


「まずは、どうして私に正体を隠してたってところかな〜?」


 愉悦と情欲が篭った目で見下ろされる。


「か、隠してはないって」


「じゃあ今日、会った時に言わなかったのはどうして?」


 どうしてって、そりゃ怖いからに決まってるだろ。という言葉の代わりに、ひっ、と情けない声が出た。普段の清純美少女の面影が一切ない、興奮しきった顔を寄せられたからだ。


「何で隠してたの? ねえ、どうして? そんなに意地悪して楽しかった?」


 はあはあと荒い息が顔にあたる。それはキャラメルのミストのようで、濃い甘さにこっちまで息が荒いでくる。


「べ、別に意地悪とかじゃないから」


 そう言うと、七瀬さんに手をつかまれる。そしてその手はズボンの中へと誘われる。


「んっ」


 嬌声を上げた七瀬さんに合わせて、俺も、ひっ、と声が出て、慌てて手を引き抜く。触れたのは太もも、にも関わらず湿っていた。


「焦らされたせいで、くるみの上に乗っただけで、太ももまでベタベタなんだよ? こんなの意地悪以外の何者でもないよね?」


 体の底から震える。


 こいつ、ヤバすぎる。


 あの時ブロックした俺の判断は正しかった。


「くるみ? 意地悪してたってことでいいんだよね? だったら私に仕返しされても文句言えないよね?」


 股間を擦り付けるように、七瀬さんの細い腰が動いて慌てて声を出した。


「ま、待って! 隠してたのは認める! でも、意地悪とかじゃないから!」


「へえ〜、納得させられる理由じゃないと、私、許さないよ?」


 納得させられる理由を考えろ。どう言えばいい? どうすれば納得させられる?


「あれ? 言えないの、くるみ? 開かない口なら閉じちゃってもいいよね?」


「むぐう!」


 何か言おうと開けていた口の中に、舌が滑りこまされた。にゅるにゅると口内を這い回る。舌を捏ねられ、持ち上げられ、嫌がって逃げ惑わせるも、絡めとられ、蹂躙される。


「ぷはぁ。好き、くるみとのキス、気持ちよすぎる。頭おかしくなりそう」


 また顔が近づいてきたので、俺は顔を横向けて逃げる。だが、それは無意味と言うように、耳にぬめっとした感触がきて体が跳ねる。


「耳! やめて!」


 そう言うと舌の動きが激しくなり、もどかしい快感と舐め回るいやらしい水音に、自然と息が荒ぎ力が抜けていく。


「はぁ、はぁ、くるみ、声漏れてる、可愛い。そんな唆ることされたら、もっと、もっと熱くなってくる」


 目を開けると、七瀬さんの目がさっきよりも蕩けている。


 これ以上はまずい、と力の抜けた腕で、七瀬さんの肩を掴んで遠ざける。


「くるみぃ、触るとこが違う」


 俺の手首を掴むと、七瀬さんは自分の胸に押し当てた。


 グレープフルーツサイズの胸が、柔らかく沈み、押し返す弾力を感じた時、


「—————!」


 七瀬さんは、高い声を押し殺し、ギュッと目を瞑って震えた。


「はあもう、ダメ。ダメだよ、くるみ。もう無理、我慢できない」


 汗をかき、肩で息をする七瀬さんの腰がせわしなく動き始めた。


 やばい、このままじゃ……はっ、思いついた。


「ま、待って! このままだとSUNのこと嫌いになっちゃう!」


 そう言うと、七瀬さんの動きが止まった。だけど抑えきれないようで、ふーふーいいながら、服の襟をぎゅっと噛み締めている。


「どうして、どうして、そんなこと言うのぉ?」


「隠してた理由に関係があるんだ」


 余裕のない表情ながら、何とか聞こうとしてくれている。


 もう少し後だったら完全に冷静さを失ってたかも。危なかった、と冷や汗を流しながら続ける。


「実は、俺もSUNのことが好きだったんだ」


「嬉しい、なら、我慢しないでいいよね?」


「待って! 隠してた理由をまだ話してないよね!?」


 うぅ、と唸る七瀬さんに早口でまくし立てる。


「隠してた理由は、恥ずかしかったからなんだ。俺もsunのことが好きなんだけど、純情で初心だから、くるみとして顔を合わせるのが恥ずかしくて、つい別人のフリをしちゃったんだ」


「……なんだぁ、そうだったのかぁ。えへへ、くるみ、可愛い」


 あ、よし、いけた。


「だから、純情な俺としては、こうゆっくり物事をさ、進めていきたいんだ」


「でも、私もう、我慢できないけど」


「だったら、sunとは恋愛できない。俺はsunと身体だけの関係になりたくないよ

 。sunは身体だけでいいの?」


「……やだ」


「ありがとう、わかってくれて嬉しいよ。sun、いや、陽南乃」


 そう言うと、七瀬さんはえへへぇとデレた。


 っしゃ! あぶねえ! 何とかなって良かった!


「じゃあ氷室さんを1人にするのは悪いし、戻ろうか」


「うん、わかった。でも、くるみ。氷室さんにさっきみたいなことしたら、次はないから」


「あ、ははあ。絶対にしないって約束するよ」


 真っ暗闇の目で言われて、俺は冷や汗をかいた。



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