side 七瀬陽南乃2


 理科室のそばのトイレ。朝には誰も使用しないトイレに小さな喘ぎ声が漏れる。


「っ……くっ」


 甘い快感が頂点に達し、逃すように身体が弓形にしなる。


 だけど、まだ足りない。


 溢れ出てくる水を塗りつけるように指を動かす。


「ぁ、んん……はぁ」


 身悶えして熱い息の混じった声を漏らす。声が出るたび、体をくねらせる度、甘い香りが、どんどん濃くなっていく


 足りない、全然足りない。


「……っく!」


 痺れが全身に広がって、頭が真っ白になった。


 まだまだ物足りない……が、始業まで残り時間数分。


 私は身嗜みを整え、廊下へ出た。


 氷室さんの様子を見てから、数十分と時間が経っている。


 なのに、やっと見つけた、という思いがまだ抜けない。


 くるみは氷室さんの裏にいる、そう確信したのは、氷室さんの安堵の様子を見たからだった。


 氷室さんは普段人と話す機会は多くない、いやない、と言っても差し支えない。そんな彼女が、髪型を髪色を変え、大勢に話しかけられている状況におかれた。


 普通なら、髪色を変えてどう思われるか不安だろう、話しかけられたらおどおどするだろう。


 だが、氷室さんはハキハキと喋り、その表情からは


 だからそこに、安心感があると気づいたのだ。私が愛してやまない安心感が。


 きっと氷室さんの裏にくるみがいる。そう確信した私は、存在を覚えて甘い感覚に耐えきれなくなり、誰も来ないトイレに向かったのだった。


 教室が近くなってきて思う。


 氷室さんのほかに、もう一人、クラスで気になる人物がいる。


 刈谷優だ。


 この学校にいるお洒落な人間は、ここ数日で調べ尽くしたが、誰も背格好が似ておらず、成果は得られなかった。だが、刈谷くんがお洒落というのなら、顔や雰囲気はともかく背丈は似ている。


 普通に考えれば別人だが、彼は、安心感という空気をまとっている気がする。


 もし、刈谷くんがくるみなら……ダメだ。同じ空気を吸っていたというだけで、息が荒ぎ、溢れてきそう。


 あ、そうだ。刈谷くんがくるみなら、知ってて言わないってことだよね?


 私に意地悪してるってことだよね?


 何されても文句は言えないよね?


 舌をぺろりとする。


 二日は寝かさない。唇に、耳、鼻に目。上半身、下半身、全てを犯しつくす。満足するまでは絶対終えてやらない。満足してやるつもりも、深過ぎて満ち足りる気もしないけど。


 くすっと笑ってから教室に入る。


 まずは友達になろう。近づいてから、じわじわ調べ、くるみかどうか暴いてやる。


 そう考えて、昼休み。ベストタイミングで私は近づいた。それに二人が知り合いであることを知り、さらに疑惑が深まった。


 そして、龍ヶ崎くんの件があり、氷室さんと刈谷くんと友達になった。


 ハプニングはあったが、思惑通りの展開。これで近づき調べることができる。


 ただ、氷室さんと友人になって、キラキラの青春を送ること。それも、私の心からの望みではあった。



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ということで、ようやっと序章的なのが終わりました! 

こっからスリルなキラキラの青春展開が始まります!


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