『スター・トイレット』

やましん(テンパー)

『スター・トイレット』


 こちらは、ギャグ・フィクションになります。(え、これから、ギャグになるんで。まだ、なっては、ないからね。いつか、ギャグになるのです。たぶん。)



         🛸



 新型O型観光宇宙船、『バロック1』は、地球周回ベース、『磐石』を飛び立ちました。


 目的地は、火星経由、木星・土星展望人工惑星『ナウンネクスト』。



やましん


 『あー、トイレは、どこ。くそ。個室は高すぎて買えなかったし。四人部屋も、手が出なかったよ。5等の大部屋は、他よりかなり、安いけど、窓も、お手洗いも、なんにもない。まったく、ここが、宇宙なんだか、海なんだか、山なんだかも分からないよ。でも、まず、トイレは、どこ。スタッフさんの姿もなし。案内板があるだろ、普通。でも、解説書もない。参ったね。』


 ひたすら、だだっ広い空間に、けっこう、沢山の観光客の姿はあります。


 宇宙そのものは、何にも見えないし、重力駆動宇宙船は、ぴり、ともしない。



やましん


 『見渡す限り、壁ばかり。ああ、すいません、お手洗い知りませんか?』




 『お、お手洗い? いやあ、三年は行ってないなあ。』



やましん


 『まあ、そうなんでしょう。普通の人は、空間自動処理できるからな。』


 


 『あなた、普通じゃない?』



やましん


 『泌尿器系のトラブルです。あ、感染なんかしません。』




 『ああ、ま、チケット買えるんだから。そうそう、あっちに、乗員パネルがあった。この、ずっとむこう。』



やましん


『ども。』



 歩くこと、15分。


 いました。


 乗員パネル。


 交差点に浮かんでる、ペラペラの警官さんパネルと、同じみたいです。


やましん


 『あの、お手洗いは、どこですか?』


 すると、パネルさんが答えました。



乗員パネルさん


 『質問ですか。要求ですか。緊急ですか。内容により、費用がかかります。あなたは、承認しますか?』



やましん


 『はい。いいです。』



乗員パネルさん


 『チケット番号確認。やましんさん。何を求めますか。種別からどうぞ。』



やましん


 『あ、と、質問です。』



乗員パネルさん


 『質問を、どうぞ。内容により、費用がかかります。』



やましん


 『お手洗いは、どこですか。』



乗員パネル



 『艦内施設案内は、無料です。五等客さまには、お手洗いの、設備はありません。もし、必要な場合は、4等客室の、有料お手洗いを利用可能です。キボウシマスカ。』



やましん


 『キボウシマス。はやく。もたないよ。』



乗員パネルさん


 『使用料100ドリムです。チケット口座から、引き落とし可能です。承認しますか。』



やましん


 『します、します。どうやって、行けばいいの?』



乗員パネルさん


 『五等の乗客さまは、フロアーからでるには、その都度、150ドリム必要です。ただし、事故による退艦は、例外の場合があります。承認しますか。』



やましん


 『はい。はい。どこから、行くの?』



乗員パネルさん


 『本艦は、たいへん、便利な最新型です。階段はありません。しかし、エレベーターで、4等フロアーに上がれます。往復、200ドリム必要です。』



やましん


 『あ、あ、お通じなんです。はやく、でるよ。やっちゃうよ。』



乗員パネルさん


 『緊急個室使用なら、100ドリム加算で、一時間自由に仕えます。なお、フロアーを汚した場合は、清掃、消毒料金がかかります。』



やましん


 『それで、いいです。とにかく、はやく、願います。』



乗員パネルさん


 『では、こちらに、エレベーターが参ります。』



 壁だった場所に、すう〰️〰️っ、と、エレベーターのドアが開きました。



やましん


 『やた。お手洗いに行ける。』



 やっと、エレベーターに、乗れました。



エレベーターさん


 『いらっしゃいませ。ご希望はどちら?』



やましん


 『お手洗いへ。』



エレベーターさん


 『了解いたしました。4等フロアーの、お手洗いで、よろしいですか。』



やましん


 『はい。急いでください。』



エレベーターさん


 『特急でしたら、早いですが、特急料金100ドリムかかります。』



やましん


 『はい。はやく。もれちゃうよ。やって。』



エレベーターさん


 『はい。では、承認されました。発車します。』



やましん


 『やれやれ。』


  



  む。なかなか、着かないぞ。




やましん


 『何秒かかりますか。』



エレベーターさん


 『4等お手洗いスペースまで、特急で、5分です。普通ルートなら、30分かかります。』



やましん


 『ひえ〰️〰️〰️〰️☺️ 宇宙旅行は、大変だなあ。』



エレベーターさん


 『宇宙は、広大にして、果てはありません。しかし、本船ならば、楽に旅行が、できます。』



 やましんは、耐えに耐え、耐えに耐え、耐えに耐えました。


 5分後、エレベーターは、お手洗いフロアーに無事到着いたしました。


 白い壁と、上品な照明が、5等のフロアーより、よい、佇まいを醸し出します。


 でも、窓などは、やはり、ここには、ありません。


 エレベーターを降りると、右も左も、分かりません。



やましん


 『しまった。案内してもらうんだった。』



 お手洗いの、表示もありませんし、エレベーターさんの痕跡も、すでに、ありません。

 


 さあ、大変です。


 もはや、一刻の猶予もありません。



やましん


 『ああ、もうだめだ。でる。でる。』



 そう、呟いて、やましんは、壁にもたれかかりました。


 すでに、実行体制です。


 すると、なんと、壁が喪失し、やましんは、内側に倒れ込んだのです。



やましん


 『な、のあんと。』



 その場所は、当たり前の、しかし、良く磨かれた、お手洗いのようには、感じましたが、グッズがありません。なんにも。



お手洗いさん


 『このたびは、よく、いらっしゃいました。歓迎いまします。ご用件をどうぞ。』



やましん


 『すぐ、お通じでます。もう、でます。でちゃいます。』



お手洗いさん


 『それは、たいへんです。個室緊急オン。』



 気がつくと、やましんは、すでに、個室に入っておりました。


 ぎりぎり、間に合いました。


 まさに、危機一髪です。


 ああ、ようやく、あの、深い深い、安堵感に、包まれたのであります。



お手洗いさん


 『使用料を引き落としました。引き続き、ごゆっくり、お楽しみください。あと、55分できます。』



やましん


 『わ。びっくししたよ。ああ。宇宙旅行とは、かくも、大変なものなのか。やはり、貧乏人が、くるものでは、ないなあ。おうちで、寝ていた方がよかったなあ。ても、一目、火星に、木星と土星は見たかったんだ。生きている間に。』



 やましんさんは、やっと、落ち着きを取り戻しました。


 すると、アナウンスが、響き渡りました。


 それは、4等、5等客用のアナウンスです。



アナウンスさん


 『あと、15分で、火星ファミリーパークに到着です。観光時間は二時間です。5等客室のかたは、ご自分で、船尾AB搭乗口より、出入りしてください。火星の姿が見えます。4等の方は、ロボット乗員が、誘導します。』



やましん


 『あらあ。またまた、迷子になる。やだねー。』



 宇宙船の事故も、飛行機と同様に、やはり、出発時と、到着時に、多発するのです。


 やましんの乗った、全長7キロに及ぶ宇宙船は、でかすぎるのが、弱点です。


 その時間、ちょうど、木星から、火星に曳航されてきた、半径5キロもある、巨大な人工惑星、別名、『氷山』が、火星の沖合いに、停泊していましたが、その情報連絡にミスがありました。


 やましんの乗った、巨大な宇宙旅行船は、見張り業務や、連絡体制に、やや、問題がありました。


 内部のシステムに手間が掛かりすぎ、外に対する警戒が足りなかったのです。


 また、VIP対応に力が入りすぎ、安い旅行客は、あまり大切にしませんでした。


 やましんが、やれやれと、立ち上がった瞬間、宇宙旅行船は、その、宇宙『氷山』に衝突しました。


 その衝撃は、なぜだか、うまく、吸収ができず、やましんは、吹っ飛びました。


 救命挺が、自動解除になり、特等と、一等から3等客は、任意の位置から、救命挺に飛び乗れました。


 しかし、4等と、5等の客は、救命挺に乗る位置に、歩いて行く必要がありましたが、だれからも、案内は、なされませんでした。


 やましんは、しかし、まったく、幸運でした。


 優秀な、お手洗いコンピューターさんは、個室を、宇宙に緊急排出したのです。


 やましんは、ようやく、小さな窓から、念願の宇宙を、まざまざと、見ることとなりました。


 しかし、酸素や、食糧、水はあまり無くて、やましんは、大切なお手洗いとともに、宇宙に取り残され、そのまま、永遠に、さ迷うことになりました。


 予想外の、最後になりました、とさ。




       めでたし、めでたし?


 


 


 


 


 


 

 


 


 


 






 

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