第320話 優樹への想い

 俺とアルシェが別れて艦内を歩いているとシュナと出会った。


「あっ! 和希様!」


「シュナ、何をしてるんだ?」


「実は...その...」


 もじもじしている彼に「どうしたんだ?」と呟く。


「和希様は小鳥遊様の事をどう思っているのですか?」


「優樹の事か?」


「はいっ!」


 まるで乙女のような表情で興味津々のように聞いてくる。


(そう言うのは普通アルシェが聞いてくるものじゃないのか?)


 ほら、刺激の少ないお姫様とかだと冒険者の刺激的な恋とかに憧れそうだもんな。


 ...よく考えたらこいつも良いとこのお坊ちゃんだったな。


 そう思うと少し可愛く思えてきた。


 ここはそれっぽく答えてみるか!


「ああ、俺と優樹は幼い時からの付き合いだからな。それなりの好意は抱いているぞ」


「それは...、どの程度のですか?」


「どの程度...と言うと?」


「いや、深い意味はないのですが。和希様は1人の男性として小鳥遊様の事をどう思っているのか気になりまして」


「えっ?」


 お子ちゃまであるシュナからこんな言葉が出てくるなんて思わなかったので驚いて変な声が出る。


「1人の男性として...?」


 そう聞かれると弱い。


 確かに優樹に好意を抱いているのは事実だが、俺には勿体無いくらいの良い子なのだ。


 ずっと一緒にいたからこそ分かるが、できれば彼女には幸せになってほしいと心の底から思っている。


 第一こんな世界でここまで生き延びれられたのも優樹が生きていると言う事実が俺を頑張らせた所は多々ある。


 彼女はいなければ今頃は恐らく...。


 ゴクリと生唾を飲みながら【この世全てのセブンス・カ悪心・杖タストロフ】をメニュー画面から眺める。


(多分この杖がもっと早く完成していて呪いで体が崩壊していただろうな。もしくはその前に死んでいるか...)


 ...。


「和希様?」


 不安そうな表情で俺の事を見てくる彼に「ああ問題ない」とだけ呟くと俺なのでした。

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