第315話 戦闘の楽しさ

 俺は覚えたばかりの鞭スキルを極めていく。


 魔物が現れる度に後衛の俺が最前線に飛び込んで行くので連携もへったくれもない戦術をあえて取る。


 鞭スキルをとにかく極めたくなった俺はデバフをかけた後にすぐさま鞭に切り替えて敵を殴る。


 敵を圧倒的火力殲滅できるのが楽しすぎて仲間達との連携を最近取らなくなってきたなとは思うが、まあ問題ないだろう。


 今は鞭スキルを向上させることが先決なのだ。


『【乱れ打ち】が【乱れ打ち+9】に進化しました。【乱れ打ち】が【乱れ打ち+9】に進化しました。【双龍打ち】が【双龍打ち+9】に進化しました』


 どんどん鞭スキルが向上していくのが本当に楽しい。


『EXスキル【鞭の達人】を取得しました。これにより攻撃スキル【滅魔打ち】を取得します』


「新しい攻撃スキルだ!」


 と飛びついたは良い物の、【滅魔打ち】はそこまで欲しいスキルではなかった。


「なになに、魔物に使った場合与えるダメージが2倍になる」


 いや、強いんだけどダメージ倍率的に考えるとどう考えても前のスキルの方が強いんだよな〜。


 俺はそう思いながらメニュー画面を楽しそうに見ていると...。


「和希!」


 いきなり優樹に大きな声で怒鳴られたので少し驚いた。


「なんだよ優樹」


「鞭スキルを使い出してすっごく楽しそうにしているのは良いけど、最近ちょっと連携を疎かにしてない!?」


「たかだか4日くらいのもんだろ? それより次のスキルの+値上げをするから手伝ってくれよ」


「...和樹、実質的に貴方は私たちのリーダーだよ? あんまり勝手な行動ばっかりしないでよ」


「...一応説明はしているだろ?」


「...わかってる、だけどやっぱり後衛にいるべき人物の和希が前に出るのはちょっと心が苦しいよ...」


 少し悲しそうな彼女の表情を見ていると少し自分が悪いのかと考えてしまうが...。


「まあ、優樹の考えは分かるよ、俺だって優樹がもしも攻撃スキルを急に覚えて前衛職より前に出てたらやっぱり思うところはあるし」


「だったらもうちょっと後ろで、せめてアルシェちゃんの後ろにはいて欲しい。何かあっても私がすぐに回復できる範囲にいてくれないと何かがあってからじゃ遅いんだよ!?」


 大きな声を出す彼女に俺は(なんだ? ここまで必死になる所か?)と思ってしまう。


 どうしてもそっちの考えの方が強く出てしまった俺は彼女の言葉を軽く流してしまう。


「分かった分かった、ちょっと気をつけるよ」


「...嘘、そうやって軽く流してる時は大体流してる時だよね? 和希の事なら大体分かるよ?」


 優樹の事を少しうざく感じてきた俺はその後会話を続ける事なく戦闘に戻るのでした。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る