第306話 大王イカ

 俺が暇つぶしとばかりに船の周りを歩いていると...。


 バシャバシャバシャ!!!


「な...なんだ!?」


 こちらに向かってくる波が一筋見える!


 しかも明らかに動きが直線的でこちらに向かってきているのだと理解できた。


 バシャン!!!


 勢いよく巨大な影が飛び出たかと思うと、それを見て俺は「イカ!?」と大きな声を上げる。


 そのまま甲板に巨大な大王イカが降り立った。


「なんでこんなデカいイカが飛んできたんだ!?」


 ビチビチと陸の上の魚のように飛び跳ねるイカの下でモゾモゾと動く人影があった。


「ふぅ、大量! 大量!」


「ってケロナ!?」


 そう! ケロナが巨大イカを捕獲してそのまま甲板へと打ち上げたのである!


「おまえ、何してんだ!」


「何してるって言われてもね〜。イキの良い獲物がいたら普通捕まえて食べるよね!」


「だからってお前...!」


 俺は船のへりから下を見る。


 この船は豪華客船並みに大きいので凄まじい高さがあった。


 どう考えても人がジャンプでやってこれる高さではない。


「おまえ、どうやってここまで上がってきたんだ?」


 そう俺が効くと彼女は種明かしをしてくれる。


「こうやったんだよ」


 そう言いながら彼女は空中にいくつも家一軒くらいの大きさの水玉をいくつも出現させた。


「こんなのをいくつも作って登ってきたんだよ。理論上魔力さえ出し続ければ宇宙まで飛んでいけるよ」


「...それはお前だけだ!」


 俺のツッコミに彼女は笑っていたが、俺は気が気ではない。


 大体それだけの魔力を持つ者などケロナくらいしか見たことがないぞ。


 並の人物であればこれだけ水を生成しただけで魔力切れになってしまうだろう。


 彼女は例えるのならば災害とでも言えば良いだろう。


 そう、台風や噴火などの災害だ。


 彼女はもはやその領域に達していると思う。


 しかし、俺がそれを伝えると彼女はそれをただただ笑う。


「私が災害級だって? ハハッ! 私が災害級だっていうのならはどうなるのさ? 神人級とかそんな感じ?」


「...考えたくはないがお前より強い存在がこの世にはいるのか?」


 その言葉に彼女は普通の態度で返してきた。


「そりゃいるよ、沢山ね」

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