第230話 足跡②

 俺にはいまいち分からない足跡をケロナは的確に見つけて進んで行く。


「あんなの良く見えるな。まるで探偵みたいだぞ」


「ああ、これでも暗殺者やってたからねこういうのは得意なんだよ」


「暗殺者って...、まあ魔王の僕だもんなお前」


「まあね。殺した人間の数だって両手じゃ数え足りないよ」


 ニコニコと笑いながら怖い事を呟く彼女に俺はこう答えた。


「それ、笑っていう事じゃないよな?」


「いや〜、逃げた人を痕跡を残さずに殺すのって難しいんだよ」


「いや、それ以上言わなくて良いから! だいたいその言い方だとただ殺すのは簡単だって言ってるだろ!」


 これ以上彼女の話を聞いていると頭がおかしくなりそうだ。


 おたまじゃくしの尻尾が生えている事以外はほぼ人間の少女と代わりない彼女がそんな事を言っているのは常識的に考えてあり得ない。


 強いていうのならまだ幼稚園児の服を着て「わ〜い」とか言いながら園内を走り回っているような見た目をしている奴がそんな刺激が強すぎる話題を口にしているだけで相当あっち系の人にしか刺さらないだろ。


 しばらく彼女の後に続いていくと、大きな川が姿を現した。


「あっ、これまずい」


 そう呟いたのはケロナだ。


「どうした?」


「いや...、足跡が川の前で消えてるんだよね...」


 その言葉が意味を示す事柄はこうだった。


「つまり...子供はこ激流の川に落ちて流されてしまったって事か?」


「その可能性は高いね。サイクロプスから逃げるのに必死になっていて気が付かずに川に落ちたって所だろう」


「流石に川の中を調べる訳には...」


 俺が川に顔を近づけると勢いよくワニ型の魔物が噛み付いてきた!


「いかないよな!」


 俺はすかさずデバフをかけてラカラにワニを倒してもらう。


『EXP7500を手に入れました』


 ここは一撃で倒せるような雑魚でもこれだけの経験値を得られる魔境だ。


 川の流れが激流なのであればそれだけそこに生息する魔物が強力である事は明白なのだ。


 そんな危険な水域に立ち入りたくなどない。


(残念だが親御さんには息子は川に呑まれて死んだと伝えるか)


 そう伝えるのがベターだと判断した俺だったが...。


 ぽちゃん...。


 かなり大きな水の跳ねる音が聞こえたので思わず振り返った。


 周りを見てみもケロナはいない。


「おいっ! あいつまさか!」


「和希! ケロナちゃんが今この激流の中に入ったよ!」


「あの馬鹿っ! 自分の命は二の次かよ!」


 俺はすかさず川の中を見回すが既にケロナの姿は見えないほどに流されていた。


「【擬似幻影龍】! これで川を上から見渡しながらケロナを探す! 皆乗れ!」


 俺の言葉に皆が龍に飛び乗る!


 このまま行方不明者が2人になったら困るぞ!


 そう思った俺は空から彼女を探すことにするのでした。

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