第205話 爽快な気分

「ははっ! すごい剣幕だったなあのクズ王!!」


 俺が笑いながら町の中で仲間達にそう言っていると、優樹がこう呟いた。


「でも何であの王様はあんなに和希の事を嫌っているんだろう? 最初に会った時なんて初対面のはずなのに手荒な歓迎をされていたしね」


「...奴は頭のネジが何本も飛んでいる上に正真正銘の馬鹿だって事だろう? 昔の伝承とやらを盲信的に信じているただのアホでもあるな」


 昔の【弱体術師】が何をしでかしたのかは知らないが、今の【弱体術師】である俺が一度でも人類の為にならない事をしただろうか?


 それすらも考えられないからこそのあのクズ王だ。


「昔の伝承の事ばかり気にして俺が人間ならば誰でも隷属させることができるとか思ってんだろうよ。実際には厳しい制約がありすぎて隷属化なんて発動させる事ができないってのによ...」


「そうなの!?」


 そこにラカラが飛び込んでくる。


「ああ、隷属させるには3つの方法があるんだ。まず一つめは自分の事を大切に思ってもらう事。大切に思われている人物ならば隷属させやすい。二つめは力の差を見せつけて追い詰める事。相手の心を折って絶対に勝てないと思わせる事ができても隷属は可能だ。そして3つめはレベルが自分よりも10以上しただと強制的に隷属させる事が可能だ。ただし上記2つよりも効果が弱くてちょっとした強制力しか働かないがな」


「ちょっとした強制力?」


「ああ、俺がラカラにしているようにお仕置き電流ぐらいのスペックしかないって事だ。上記2つならば俺が死ねと言えば恐らく自殺させる事も可能なくらい強力な強制力が働くんだよ」


 その言葉に優樹が驚く。


「えっ? って事は私は和希が死ねって言ったら自殺しちゃうって事!?」


「...ああ優樹は大丈夫だ。俺の強制力が働かないように全ての項目を外しているからな。ちなみにラカラには俺の命令を無視するとケツに電流が流れるように設定している」


「なっ! その設定まだしてるのかよ!!!」


 怒るラカラに俺は笑って言った。


「まあ、最近はだいぶ指示を聞いてくれるようになったし、もう大丈夫だとは思っているけどな」


 笑う俺の姿を見てラカラは呟く。


「なんか今日の兄ちゃん楽しそうだな」


「ああ、まあな。あのクズ王の狼狽える姿を見て俺は満足したぜ。少し腹が減ったな。適当な店で食事にでもするか」


 俺は飲食店を指差しながらそう呟くのでした。

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