第197話 フワン②

「へぇ...、私の檻の中で炎を生み出せるとはね...」


「舐めるなよ。【賢者】である俺をな!」


 両手から爆炎を吹き出しながら思いっきり上に放出した!


 ピキピキ...パリン!!


 石川の放った爆炎が【水氷の獄】を打ち崩す!!!


「ほう...、なかなかやるようですね」


「はぁ...、はぁ...。どうだ! 今度はこっちの番だ!!」


 そう言いながら新たな魔法を放つ石川。


「くらえ! 火炎系最強の魔法を!! 【地獄炎】!!」


 両手から凄まじい熱量の火炎魔法を練り合わせ、更に大きな【地獄炎】を創り上げる!!


【賢者】の名に恥じぬ行動を見せている石川に比べて【勇者】の佐藤は氷漬けになって倒れていた。


(おいおい、俺たちよりレベルが上の癖してやられるなよ)


 思わずため息出る中、癪だがここは石川の援護に回る事にした。


 勿論協力する訳ではない。


 00:03:00


 このまま石川を戦わせていれば消耗戦となり残り3分くらいなら耐えられそうだと思ったからだ。


「どうした? 俺の魔法に恐れを成したか? フワン!」


 フワンを煽るような言葉を投げかける石川を見てふっと笑う奴の表情は余裕たっぷりだ。


「余裕を持っていられるのも今のうちだ。吠えれる内に吠えていろ! 【地獄炎】超動!!」


 両手一杯に練り込まれた炎撃が放たれる!!


 今まで見た事ない程の炎熱がフワンを襲う!!!


「...ふっ」


 それでも余裕を崩さないフワンを飲み込む【地獄炎】!!!


 まさしく地獄の炎といった現象が目の前で怒っているので俺はアルシェに盾を貼る事を命じる。


「くぅ!!」


 灼熱の炎が敵味方見境なく襲い掛かった!!!


「【賢者様】!?」


 生き残っていた騎士団の連中をも巻き添えにどんどん炎が大きくなっていく。


「やりすぎだ! 石川!!」


 勿論彼は俺の言葉など全く聞いてはくれない。


「落ちこぼれの高坂君は黙っていなさい。俺がここで強敵のやつにとどめを刺す瞬間を見ていれば良いんだよ!」


(おいおいおい、お前がやってる事は普通に危ないし犯罪すれすれだぞ!?)


 いや、世界を救うと言う大義名分がなければ完全にアウトだろう。


 周りの森を焦土と化しながらようやく火の手が治まってきた。


「はぁ...、はぁ...。どうだ。俺の勝ちだ!!」


 高らかな勝利宣言をする石川の前に「...やはりこの程度ですか」と姿を表すフワン。


 灼熱の炎の中にいたと言うのに涼しげな表情を浮かべている彼女が片手を上に上げた。


「ではそろそろ終わりにしましょう。時間も少ない事ですしね【氷雪の槍】」


 彼女の手の上に極太の氷柱が創生され石川に襲い掛かってきた!


「そんな物とかしてやる! 【地獄炎】!!」


 そう言いながら意気揚々と灼熱の炎を巻き起こす石川に向けて「フッ」と氷の息を吹きかけて【地獄炎】を凍らせた!


「なっ!? 【地獄炎】が凍るだと!?」


「残念ですが【地獄炎】とは名ばかりの威力でしたね」


 そのまま氷柱が石川を襲いダウンさせた!


「ガハッ!?」


 その場のドサッと倒れる石川を見て俺は頭をフル回転させる。


(どうする!? 石川の魔法でもダメージを与えられている様子はない。これはまた逃げるが勝ちなのでは?)


 そう思いながらも残り時間を見てみる。


 00:01:50


 ダメだとても逃げ切れる時間じゃない。


「残る勇者は2人ですか。残念ながら今回もあの方の期待に応えられるような人物はいなさそうですね」


 そう言いながら構える奴の動きを見て身構える俺たち。


「くるぞ!」


 俺の言葉と共にフワンとの決戦が始まるのでした。


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