第160話 なんでこんな所に?

(なんでこんなところに姫様がいるんだ?)


 と言うかこの状況ってつまりそう言うことだよな?


 いくら私が馬鹿でもこの状況を見ればことの重大さに気がつく。


(兄ちゃんの知り合いがこの国の姫様を誘拐した? でもそれにしては姫様の方も嫌な顔はしてない様な...)


 ...ダメだ、私じゃ考えがまとまらない。


 一度兄ちゃんの所に戻ろう。


 そう思った時だった。


「はっ!?」


 急に殺気を感じたので私はその場を去った!


(まだ追いかけてきてる!)


 明らかにヤバいモノが私を追ってきているのが分かる。


 この前戦ったリィカとか言う奴程では無いと思うけど、それでもヤバいと感覚で分かる!


 そいつから逃げているといつのまにか人気のない裏路地に誘導されていた。


 地理が頭に入っていない事がこの悪手に繋がったのだ。


「しまった! 行き止まりだ!」


 私がそう叫んだ時に私の前に人影が現れる。


「...」


 黒いローブを着込んだその人影が長剣を手にして私の前に立ち塞がる。


(...逃げられないなら戦うしかないか)


 そう思った私はブーメランを投げる!  


 木さえも薙ぎ払う私のブーメランを長剣で弾くやつの足元に接近してナイフを振るう!


(2カ所からの同時攻撃だ!)


 勿論【痺れ草のナイフ】で痺れさせるのが本命である。


 格上が相手でも感電状態にさせてしまえば逃げ切れる。


 そう思った私でしたが...。


「が!?」


 ローブを着込んだ奴に腹を蹴られていた。


 つまり奴は私の同時攻撃に的確に反応できていたと言うわけだ。


「かはっ!」


 咳を混む私はすぐさま【幻影龍の短剣】を投げつけたがそれも弾かれた。


 ブーメランが手元に戻ってきたので【幻影龍の短剣】を拾って構え直す。


(どうする? ダメージ的に後1発貰ったらまずいぞ!?)


 さっきの1発で意識が既に朦朧としているのが分かる。


 息を吸うだけで凄くしんどい...。


 呼吸が荒くなり視界が暗くなる...。


(まずい...、情報を...兄ちゃんに持って帰るんだ!)


 何を自分でも熱くなっているのかと思うけど、私はきっともう...。

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