第158話 城下町エトランゼ②

「和希?」


「和希様?」


「兄ちゃん?」


 全員が俺が急にギルドから出てきた事に違和感を覚えたのだろう。


 俺ははぁっとため息を吐いてこう呟いた。


「早速で悪いがこの町に滞在するのはやめにしよう」


 その言葉に皆が反対する。


「なんで!?」


「まだこの国に来て一日も経っていませんよ!?」


「兄ちゃん!?」


「ああっ! もう五月蝿いやつらだな! 分かったよ! 理由を言うから黙ってくれ!」


 俺は息を整えるとこう呟いた。


「...佐藤がいた」


「「えっ!?」」


 驚いたのは優樹とシュナだ。


「誰だ佐藤って!」


 ラカラは分かっていなさそうなので放置しておこう。


「本当? 本当に佐藤だった?」


「ああ、俺があいつの顔を見間違うと思うか?」


「...」


 その言葉に首を振る彼女。


「だろう? だからさっさとこの町から脱出するぞ」


 俺がそう呟いた時でした。


「...小鳥遊に高坂?」


 佐藤の奴が俺たちの前に現れたのだ!


「ヤバっ!」


 俺が勢いよく走り出すと、なぜか奴も勢いよく反対方向に走り出した。


(はぁ!? なんで【勇者】であるお前が【弱体術師】の俺から逃げるんだよ!?)


 思わずそうツッコミをいれてしまう俺。


「和希様! どうしますか!?」


 シュナが身構えたまま俺の指令を待っているし優樹は動揺して動けていない。


 そう言う俺もどう行動すればいいか判断ができていない。


 そんな時だった。


「なんだ? 追いかけっこか? なら私に任せろ!」


「ラカラ!?」


 そう、佐藤の後を追ってラカラが駆け出したのだった!

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