第144話 食べ歩き

「なんだよあいつら。俺の事を男として見てないだろ!」


 俺は怒りを露わにしながら外を歩いていた。


 せっかく良い景色が広がっているのに俺の心の中はモヤモヤしている。


「シュナはともかく、優樹とラカラはもうちょっと意識しろよ...」


 男であるシュナはまだ良い。


 だが女の子である優樹とラカラに一緒に風呂に入っても良いと言われると少々心が傷つく。


 特に幼馴染である優樹にそう言われるとな...。


 むしろ幼馴染だからこそ信頼してくれているという心の裏返しなのかもしれないが、それとこれとは別の話だ。


「くそっ! 腹が立って来たら腹が減って来たな...」


 思えば今日はまだ何も口にしていない。


 せっかくなので俺は町の中を探索しギルドの位置を覚えると観光気分で歩いて回る。


 しばらく歩いていると甘い香りが漂って来たので足を止めた。


「団子か...」


 俺は食べ慣れた味を思い出して思わず店に入る。


「こんにちわ〜! お一人様ですか?」


「ああ」


 俺は無愛想に席に座る。


「ご注文はお決まりでしょうか?」


「みたらし団子を3本と醤油団子を3本頼む」


 ここはオーソドックスにこれだろう。


 俺はおしぼりで顔を拭くと大きくため息を吐いた。


 なんだろうかこの気持ちは。


 この店に入ってから妙に心が落ち着くのだ。


 しばらくすると目当ての団子がちゃんと運ばれてきた。


「みたらし団子3本と醤油団子3本です! 熱いお茶はサービスですのでお代わりできますよ!」


 ウェイトレスさんの元気のいい声にこっちまで元気になって来た。


 そして早速醤油団子から食べる。


 ハムっ...。


「うおっ! 美味い!」


 程よい醤油加減にやわらかい団子の食感が病みつきになりそうだ。


 あっという間に3本食べた俺はすぐさまおやつのみたらし団子に手を伸ばした。


「こっちはどんな感じだ?」


 俺はもう一度口を動かして味わう。


「これはやっぱり王道だな!」


 程よい甘味が口の中に広がる。


 日本人として王道な甘味に俺は満足した。


「ふぅ...」


 熱いお茶で一服した後はちゃんとした料理が食べたくなってきたな...。


「よしっ! 思い立ったが吉日だ!」


 俺は団子屋の前にある天ぷら屋に向かうのでした。

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