第89話 小鳥遊優樹③
なんか急に昔の事を呟き出した彼女に俺は戸惑う。
「優樹。お前そんな昔の事をまだ覚えていたのかよ!」
俺の事を妙に持ち上げてくれると思っていたら、そんな事があったのか!
ちなみに俺は全く覚えていない。
特撮番組を見ていた事は覚えているが、優樹を助けた事なんて全く覚えていないのだ。
(そんなこと言われても俺覚えてないぞ!)
助けられた方には一生残る記憶だろうけど、助けた側は一瞬で忘れると言うアレだろう。
じゃあ何か、俺がその時に優樹を助けたおかげで彼女は今のような明るい性格になったとでも言うのか?
人生とは一体どこで何が作用するのかまったく分からないな。
ちょっとした事でその人の人生を大きく変えることもあるのだなと彼女の話を聞いて理解した。
それでも面を向かって俺の事をヒーローだと言って来られるとめっちゃ恥ずい。
「ああ、優樹。分かったから俺の事をヒーローとかって言うのはやめてくれよ」
「うん...。分かってる。和希そう言われるの昔っから嫌いだったもんね」
(ひねくれてんな昔の俺。ヒーローになりたいけど感謝されるほどのことはしてないってか? 特撮番組の影響受けすぎだろ!)
いやまあ分かるよ? 感謝される事をしても感謝されないダークヒーローの格好良さはさ。
でも今の俺なら「助けてやったんだから金か有能なアイテムをよこせ」とか言い出しそうだ。
無償で人助けなど俺は絶対にしないだろう。
特に異世界に来てからはその傾向が強まった気がする。
幼馴染の記憶に若干の気まずさを感じながらも俺達は次の町までの道のりを馬車を使って移動するのでした。
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