第88話 小鳥遊優樹②

 これはまだ私がカラテを習う前...。


 そう、恐らく幼稚園児時代の記憶だ。


 私は今と違って内気で自分の思ったこともハッキリと言えない性格だったのを覚えている。


 そんな中、和希と私は出会った。


 最初の和希の印象は馬鹿で元気な子だなぁ程度の認識だった。


 毎日特撮番組のヒーローの真似をして遊んでいる和希の姿は幼稚園児時代のみだったが、私に取ってはそれが1番印象に残っているのだ。


 幼稚園の中でも和希はその明るさで皆とすぐに仲良くなったのだけれど、私は内気な性格が災いして全く友人などできなかったのだ。


 なので毎日幼稚園には通うのだけどつまらない日々を過ごしていたある日。


 クラスのいじめっ子が私を標的にしてきたのだ。


 まあ、いじめとは言っても幼稚園児のやる事なので折り紙を取られていただけなのだけど、当時の私はそれだけで涙を流していた。


「返してよ〜!」


「優樹ちゃんいつも1人だよな〜! ほらほら折り紙はこっちですよ〜!」


 ヒラヒラと折り紙をちらつかされていたので私はそれを追いかける。


 その様子を見ていじめっ子達は笑っていた。


 それが悔しくって涙を流し続けながら追いかけている姿を楽しそうに見ているのはいじめっ子達だった。


 そんな時。


「はいどーん!」


「わわっ!!!」


 いじめっ子が急に誰かに押されて転倒した。


「誰だって...和希!」


「ビューン! 正義の味方フォーエバーレッド参上!! かわいそうな少女を助けるヒーローだ!」


 なんて言いながらいじめっ子達を蹴散らした。


「うわっ! こいつやべぇ! 皆逃げろ!!」


 いじめっ子達を退散させると決めポーズを決めて私の方にやってくる和希。


「大丈夫だったかなお嬢さん。悪はさったので安心してくれ」


 後で知ったのだがこの時の和希は先週の特撮番組の影響を受けて人助けをすること=ヒーローだと思っていたらしく、そのお陰で私を助けてくれたらしい。


 それでも私を助けてくれた和希の姿は眩しく見えて、その後から私は和希に恩返しはしたくてカラテを始めた。


 中学生の頃になると立場が逆転し始めたが、それでも私にとって和希は今でもヒーローのままなのでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る