第42話 初めての安息
俺は周りを警戒しながら2人についていく。
そんな俺に優樹はこう呟いた。
「そんなに警戒しなくても大丈夫だって。この町ならきっと和希も安心して療養出来るよ」
「そうは言ってもな...」
異世界にきてから安心した事なんてなかった俺は無性に周りを警戒する癖のような物がついてしまっているのだ。
店に入るとついつい相場がいくらくらいの物なのかと勘繰ってしまう。
城下町でぼったくられすぎた結果、優樹以外の人物が信じられなくなっているのかもしれない。
「何して遊ぼっか?」
「そうだな〜。私アイスが食べたい!」
「アイスか...」
今覚えばこちらの世界に来てからそんな良い物食べた事がない。
安くて味の薄い定食しか手が届かなかった俺にとってそんな物に金を使うことなどできなかったのだ。
「じゃあ、あそこで食べて行きましょうか」
優樹の手の先を見てみるとそれらしい屋台があった。
「いらっしゃいませぇ」
店主の顔を見た俺は焦った。
「なっ!? なんでモンスターが町の中にいるんだ!?」
思わず杖に手をかけた時だった。
「和希? ああ! ごめんごめん! この町は知性のあるモンスターを町の中に入れても良いルールがあるの」
「町の中にモンスター?」
驚く俺にシュナまで声を上げてくる。
「驚きすぎです! 和希さん! 私だってモンスターなんですからね!」
「はっ!? お前はどこからどう見ても人間だろ!」
「これを見てください!」
そう言った時に彼女は帽子をとって猫耳を出し、スカートの中から隠していたであろう尻尾を出してきた。
「わっ! 本当にモンスターなのか!?」
「ええ、シュナちゃんは人間の父さんと猫人の母さんを親に持つハーフなんですよ」
「ハーフ...そんな者もいるのか」
「ここにいるモンスターは大体が人間とモンスターのハーフで純血のモンスターは片方の親である事が多いね。ちなみに私や和希のような1種族の血筋しかない物を純血種。シュナちゃんのように2つ以上の血が混じっている者を混血種と呼ぶんだよ」
カルチャーショックを受けながらも俺達は雪女(?)っぽいモンスターからアイスもといカキ氷をもらう。
(アイスってよりはカキ氷だな...)
それでもまあ今の俺からすれば最高の甘味だった。
久しぶりの甘い食べ物に3杯もおかわりしてしまった。
「美味かった...」
「和希ったらシュナちゃんよりもはしゃいでたよ」
「和希さんは甘い物が好きなんですね」
「ああ、まあな。他にもチョコとかあると嬉しいんだが...」
「私も流石にチョコは見たことがないね〜」
「ちょこ?」
優樹もチョコはこっちの世界で見たことがなく、シュナに至っては聞いたことすらないようだった。
チョコがないのは少し悲しいがまあ良い。
久しぶりのデザートとの出会いに歓喜しながら再び歩き出すのでした。
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