第30話 【勇者】VS【弱体術師】

 〜決戦日〜


 ここは城下町にあるコロシアム。


 王様が集めたギャラリーが俺と佐藤を上の席から見下ろしている。


「これより【勇者】佐藤殿VS【弱体術師】の戦いを始める!」


 その言葉に歓声が上がる。


「【勇者】様〜!! 【弱体術師】なんてぶっ潰せえぇ!!!」


「【弱体術師】に騙されて可哀想な【回復術師】様を助けてあげてください!」


「そうだそうだ!」


 ...この場に俺の味方をしてくれる者はいない。


 この世界に俺の光はない。


 そう、ここにいる誰一人として俺が勝つなどと思っていないのだ。


 観客に手を振る【勇者】佐藤は満面の笑みでこう呟いた。


「ハハッ! 【勇者】って奴は大人気で辛いなぁ...。所で【弱体術師】の高坂君の人気は全くないみたいだねぇ...」


 ニヤニヤと笑う奴の表情が凄く気持ち悪い。


 完全にアウェイの中、一つの大きな声が会場を引き裂いた。


「和希ぃぃぃ!!! 佐藤なんかに負けるなぁぁぁ!!!」


 ...あった。


 理不尽きまわりないこの世界にも光はある。


 そう...、優樹だ。


 俺は優樹の方を見て静かに笑う。


「任せろ。お前を佐藤なんかの奴隷にさせはしない」


 そう俺が呟くと佐藤が口笛を吹く。


「ひゅ〜。格好良いな高坂。だけど能力値の低い【弱体術師】で【勇者】である俺にどうやって勝つつもりなんだ?」


 奴が剣を抜き俺が杖を構える。


「ルールはわかっておるな? 消費アイテム使用による回復禁止、力尽きるかギブアップするまで終わらない戦いだと言う事を」


 王様の言葉を聞いた俺と佐藤は答える。


「...ああ」


「それで良いぜ。道具を使いまくってゾンビ戦法なんかされたらしらけるからな」


「では互いの合意の元に両者ともいざ尋常に...。始めぇ!!!」


 王様の掛け声と共に異世界人どうしの戦いが始まるのでした。

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