第3話 皆の職業

「まずは佐藤殿」


「ああ、俺は【勇者】だ」


 その言葉に歓声が沸き立つ。


「ついに我が国にも【勇者】が!!」


「これで救われる!」


 などと言う声が聞こえてくる。


「次に石川殿」


「俺は【賢者】? とか言う奴らしい」


 また歓声が上がるのだが、俺の心中は複雑だった。


 石川が【賢者】!? ありえないだろう! こいつは小学生の時のテストで50点以上を取った事がないんだぞ! それに佐藤が【勇者】!? もっとあえりない! こいつは俺を虐めていた主犯格だぞ! そんなクズが【勇者】だなんておかしい!!


 そして次に優樹の番が来た。


「それでは小鳥遊殿」


「えっと...【回復術師】らしいです」


 その言葉に落胆の声が会場を包む。


「【回復術師】か...」


 まるで呆れたかのような声質だ。


「では最後に高坂殿」


 おっと俺の番のようだな。


 まあ【回復術師】でこれなら【弱体術師】なんてもっと酷いだろうな。


 そう思いながらも答える。


「俺は【弱体術師】だ」


 なんだ? 俺の言葉を聞いた者達が急に静かになる。


「やはり聞き間違いではないようじゃな...」


 そう呟いた王様が俺に兵士を差し向けてきた!


「なっ!?」


 いきなり槍を向けられた俺は驚きながらも後退りをする。


「不吉な勇者【弱体術師】よ! 貴様にこの城に残る資格はない! すぐさま出ていくが良い!」


「は...はぁ!? どう言う事だよ!」


 驚く俺に優樹が前に出てくれる。


「ちょっと待ってください! なぜ和希にこんな事をするんですか!?」


 王様はその言葉に頷きながらもこう呟いた。


「ふむ、小鳥遊殿には後で話そう。とりあえずそこの悪魔には御退場願わなくては」


 パチンと指を鳴らして兵士たちに号令をかけた。


「皆の者! 早くその者を城から退出させよ!」


「「「はっ!」」」


 俺は意味が分からないまま押し出されてしまう。


「和希!! 和希ぃ!!!」


 優樹の声が聞こえるがどんどん遠くなっていく。


「こっちに来い!」


 兵士の力強い腕に抗う事が出来ず、俺は激しい雨の降る城外に叩き出されてしまうのでした。

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