サイコパス・シンドローム

戯 一樹

第45回横溝正史ミステリ&ホラー大賞応募用あらすじ(*ネタバレ含みます)

 主人公碓氷新汰は、中学生時代にあった実妹による両親の殺害がきっかけで感情が麻痺してしまい、常日頃から愛想笑いを浮かべながら、日々の人間関係を無難にやり過ごしていた。

 その一方で、妹が両親を殺した動機が何年もわからないまま苦悩していた新汰は、妹の異常心理を理解できるようなサイコパスを探し求めるようになっていた。

 そんなある日、新汰は同じクラスの女子生徒、黒峰紫亜とふとしたきっかけで深く関わるようになる。紫亜は以前、クラスメートの女子グループから机の上に大量の虫の死骸を置かれるという嫌がらせをされながらも、平然と自分の席に座っていたと逸話があるほどの奇人として有名な少女でもあった。

 そうして紫亜と関わるようになって数日が過ぎた頃、紫亜の従姉妹が何者かによって刺殺される事件が起きる。興味を抱いた新汰はさっそく調査に乗り出すが、一向に手掛かりが見つからない。そうしている内に、今度は紫亜の伯母が何者かによって殺害されてしまう。

 最初の事件とは違い、殺され方に不可解な点が多かった今回の事件に、紫亜は「犯人は従姉妹を殺した人と同一人物で、葬式で私と会うために、私の伯母を殺した」という推理を新汰に聞かせる。その推理は的中しており、後日警察に逮捕された犯人は、最初に殺害した女性の葬式にいけしゃあしゃあと参加した際、たまたま見かけた紫亜に一目惚れし、再び紫亜に会うために紫亜の伯母を殺害したと驚きの供述を口にする。

 事の顛末を知り、絶句する新汰であったが、今回の件で紫亜の異常性を改めて実感し、さらに興味を抱くようになる。

 その一カ月後、今度は市内の山中で頭蓋骨のない白骨死体が次々に発見される事件が起きる。実はその犯人は新汰の通う学校の教師で、新汰とも面識のある人物だった。

 だが誰ひとりとして疑いの目を向ける者はおらず、新汰も紫亜のストーカー問題を解決するために奔走していたせいもあり、首なし白骨死体の犯人が身近にいるとは知らずに学校生活を送っていた。

 だが、紫亜のなにげない発言によって精神的に追い詰められた犯人は、ある日突然自宅に隠していた生首と共に放火自殺を図る。それは家族として共に過ごしていた生首達と永遠に一緒にいるための自殺だったのだが、あたかも最初から真相を知っていたかのごとく、犯人に自殺するよう誘導した紫亜に、新汰は戦慄を覚える。

 さらに一カ月、なんの前触れもなく紫亜が行方不明になってしまう。だがそれはただの行方不明ではなく、新汰の級友でもある平坂愛莉という少女が起こした事件だった。

 発端は、たまたま新汰と紫亜が密かに二人きりで会っていたことを知った愛莉が、新汰への想いが募るあまり、衝動的に紫亜にケガを負わせてしまったせいであったのだが、その時自己保身でとっさに気絶していた紫亜を学校裏の林の中に連れ込んでしまい、そのまま事件を隠蔽しまったのがすべての始まりだった。

 やがて、紫亜を探しにきた新汰と遭遇し、罪を暴かれる愛莉。そこで愛莉は、過去に新汰が妹と共に両親から虐待を受けていた事を知らされる。そして両親が妹の手によって殺害される前から、何度も両親を事故に見せかけて殺そうとしていた事までも知り、愛莉は愕然とする。そうして失意のまま、愛莉は駆け付けた警察官によって逮捕されるのであった。

 後日、無事に生還した紫亜は、行方不明事件も重なっていっそうクラスメート達から忌避されながらも、いつもと変わらない無表情で平然と日常生活を送っていた。そんな紫亜の異常性を再確認しつつ、新汰は妹が起こした事件の真相を知るために、紫亜のそばに居続けるのであった。

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