隣の席でにんまり笑う、不思議なギャルの不思木さん

北森青乃

苦手、超苦手

 



 突然だけど、俺はギャルが苦手だ。


 その存在を知ったのは、小学校くらいだった気がする。ニュースに映し出されたカラフルな髪・黒すぎる顔・ド派手なメイク。後に知る事となるヤマンバギャルという名称。


 その圧倒的存在感は、良いも悪いも俺にとっては衝撃的だった。

 果たして、同じ地球上に本当にこういう格好をしている人がいるのだろうか。ドラマの宣伝ではないのか。そう思わざるを得なかった。


 ただ、徐々にテレビで取り上げられ、それらが本当に都会ではブームなのだと知ると……田舎と都会の違いに唖然とするしかなかった。


 女子高生ギャルのコギャル。

 コギャルの進化系、ヤマンバギャル。

 ガングロギャルにお姉ギャル。


 多種多様な派生ギャル達。それらをテレビで見ない日は殆どなかった気がする。


 最初は衝撃を受けた俺。ただ、ほぼ毎日メディアに登場する彼女らの雰囲気に……若干の苦手意識を持つのにそこまで時間はかからなかった。


 ギャル語と言われる独特なしゃべり方。イントネーション。

 金髪肌黒。その他もろもろの特殊なメイク。

 礼儀もないような態度。

 地べたに座るといった姿。


 テレビ局もあえてそういう場面や、そういう人達に取材しているのかもしれなかったけど……当時の俺にしてみれば、ギャル=こういう姿というのが確立されていた。


 勿論、小中とモノホンのギャルとは遭遇したことは無い。

 まぁ、小学校中学校と同級生のメンツが変わらない、かなりの田舎だって事もあるだろう。都会に憧れを持つ女子達の話題には挙がっても、流石に手本が居ないとマネしようがない様子だった。

 大体、長いと保育園からあの付き合いの奴もいるくらい、変り映えがない。それ故に男女隔たりもない程仲が良かった小中のメンツ。


 いくら女子とはいえ、仮に真似したとしても、


『似合ってね~』


 なんて冗談言いながら、笑ってたと思う。


 こうして、一大ブームを巻き起こしたギャル達。そのブームが落ち着くにつれて、テレビやらなにやらでも前の様に頻繁に目にする事は少なった気がする。

 とはいえ、一度頭にこびりついたイメージってものは、そうそう消えない。

 たまに目にするたびに、こういう人達が居ない田舎で良かった。常々そう思うようになったんだ。




 だから俺は、



「おっはー、なっち! 久しぶりぃれっちん!」



 ギャルが苦手だ。



「じゃっ、後でねー? ……よいしょっと。ん? やっほー、おはぁ」



 金髪肌黒。その他もろもろの特殊なメイク。



「おっ、おはよう」

「なになにー? めっちゃ元気なくない? あっ、もしかして休み中、アタシに会えなくて寂しかったとか?」



 独特なしゃべり方。イントネーション。



「いや、そんな事は……」

「ウソウソ冗談だってぇ。ナニナニ? 本気にしちゃった? ハハッ」



 礼儀もないような態度。



「だから……」

「う~ん? 怪しいけどねぇ」



 俺はギャルが苦手だ。本当に苦手だ。



「ふっ、普通に気のせいかと」

「へぇ~、気のせいねぇ……」



 特に、隣の席の……



「ねぇねぇ、よっしー?」

「なっ、なんだよ不思木さん……」



 不思木さんは、超苦手だ。



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