第45話 スケルトン夫婦が、仲間に

 寺院で冒険者を組成させようとしたら、まさかスケルトン化するとは。


「お前ら、なんともないのか?」

「ええ。むしろ肉体から解放されて、スカッとしてまさあ。ありがてえ」


 スケロクと名乗ったスケルトンは、感謝の言葉を口にした。


「モジャモジャ、これってどういうこと? 彼らは敵?」

「モンスターの反応はないモジャ。彼らは召喚獣扱いモジャ」


 ウニボーが、モモコの問いかけに答えた。 


「なんで、元の名前じゃないんだ?」


 冒険者のプレートがあったが、スケルトン夫妻はオレたちに返してくる。


「蘇生に失敗したってわかって、仲間に悲しい思いをさせたくないんでさあ」

「ウチらはこの姿で、第二の人生を歩みますえ」


 なら、仕方ないか。これは、彼らの仲間たちに返そう。 


「まさか、ネクロマンシーなんて」


 だが、納得していない方がお一人。


「これは奇跡? それとも、魂の冒涜?」


 頭をクラクラさせながら、マファルダ様は目を回す。


「おそらく、世界の裏側では死んでないから、魂だけは回収できたモジャ。でも肉体の再生はできなかったモジャ」


 だから、気に病むことはないと、ウニボーはマファルダ様を慰める。


「ああ、おそらくあっしらが二人共、闇属性の冒険者だからでしょう。あっしがアサシンで、家内はネクロマンサーでしたから」


 神を冒涜していたのは自分たちだと、スケルトン二人はマファルダ様を説得する。


「な、なるほど」


 マファルダ様は、ようやく正気を取り戻したようだ。


「でも、そのまま歩いていたら、モンスター扱いになるよな?」

「こうするモジャ」


 ウニボーが、スケルトンの額に光る宝石を埋め込んだ。使役魔法だという。


「これで、街の人にはモブに見えるモジャ。冒険者には、召還獣のスケルトンと認識されるモジャ。敵側に操られることもないモジャー」

「ありがてえ。なにからなにまで世話してもらって」


 額についた宝石を指でなでながら、スケロクは感謝をした。


「ちょっとまてよ。闇属性がスケルトンになるんだったら……」


 オレは、考えを巡らせてゾッとした。


「ほら、やっぱりオレが正しかったんじゃねえか!」


 スキュラ戦のことを、オレはモモコに話す。


 モモコが犠牲になって蘇生してもらっても、スケルトンになっていた可能性が高い。


 その事実に、さすがのモモコも冷や汗をかく。


 冒険者ギルドへ。


 一旦、スケロクたちには領地へ行ってもらう。


 スケロクたちの仲間に、ドッグタグを渡した。


「あ、ありがとう。ありがとう。でも……」


 タグを抱いて、剣士がうずくまる。


「遺体の回収はできなかった」


 オレは、嘘をつく。


 とはいえ剣士は、理解してくれたようだ。


 手頃な家を購入して、領地への拠点とした。領地へと戻る。


「ホントに、別れのあいさつとかはいいのか?」

「日陰モンのあっしらを、これまで面倒見ていてくれたんでさあ。そろそろ、肩の荷をおろしてやらねえと。無事で逃げ切ってくれただけでも、あっしらは仕事を全うしたってもんでさあ」


 彼ら冒険者たちも、苦労していたのか。


「で、誰の召還獣になるんだ?」

「おそらく、ピエラ?」


 モモコの意見が、妥当だろう。彼女が第一発見者だ。


「ボクの? いいの?」

「いいもなにも、一番敵に狙われやすいのはお前だ。魔術の要だからな」

「ありがとう。じゃあスケロク、スケチヨ、よろしくね」


 ピエラが言うと、「こちらこそ」と二人共返す。 


「武器などの装備品も、スケルトンに持たせて使えるモジャ」

「じゃ、装備品の新調だな」


 オレたちは【作業台】で、スケロクたちの装備を改造を始めた。【かまど】にも、火をつける。


「強化素材がめちゃくちゃ手に入ったから、これで行こう」


 かまどに、強化素材を放り込む。


「で、どうするのクニミツ? スケルトンを王都まで連れ回す?」

「それなんだよなぁ。やっぱ、難しいな」


 かまどで装備を強化しながら、オレはあぐらをかく。


 スケルトンを連れ歩いたら、王宮の術者に看破される可能性も高い。王都の魔術師がどれだけの実力かは、謎だ。とはいえ、用心するに越したことはないだろう。


「ネクロマンサーは、王都ではよく思われていない?」


 モモコがスケキヨから、ネクロマンサーについて聞く。


「王都というより、教会や寺院では、あまりいい顔はされまへんえ」


 スケルトン召喚は、暗黒系の魔法に分類されるらしい。寺院などの神聖系魔法の使い手からは、禁忌呼ばわりされている。死者を冒涜していると。


 それでも、「手数が増えるのはいいことだ」と、ネクロマンサーに手を出す人は後を絶たない。


「考えたんだけど、【世界の裏側】の攻略時だけ呼び出すことにするわ。それまでは、こちらでお留守番をしてもらいましょ」

「それが一番いいかもな」


 一応ウニボーにも許可をもらう。


「歓迎するモジャ」


 精霊たちも、彼らに敵意を抱いていないらしい。ならば、OKか。 


「手裏剣か。いいな」


 武器の中に、見知った道具を見つけた。こんなのを使いこなすのだ。生前のスケロクは、たいした実力者だったのだろう。


「ですが、あのニンジャ相当な腕前ですぜ。なんですかいありゃあ?」

「こっちが聞きたいよ」


 それにしても、あのクノイチはいったい。


「王都で、情報を集めよう」

「だな」


 装備が完成したので、スケルトン夫妻に渡した。


「ありがてえ。見違えましたぜ」

「おお、手に持った瞬間、力がみなぎりますえ。おおきに」


 スケルトンたちも満足げだ。


 改めて、王都の冒険者ギルドへ足を運んだ。


「クニミツさま、モモコさま、ちょうどいいところに!」


 早々に、受付嬢に呼び出された。


「王都直属の騎士が、みなさんを呼んでいます」

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