第20話 領地拡大

「クニミツさん、モモコさん? ルイまで」


 気がつくと、オレたちはドリスさんの屋敷に戻ってきた。少年の部屋である。


「な、なんだ?」

「ムーンストーンの影響モジャ。引き寄せられたモジャー」


 ウニボーが、オレの頭上に着地する。精霊だからか、重みを感じない。


「まあ、もう帰っていらしたの? まだ一日しか経っていないのに」


 ドリスさんも、驚いている。


「それよりドリス様、ご子息のご容態は?」


 ルイが速攻で立ち上がって、ドリスさんにかしずく。


「元気です。このとおり」


 子どもは、紙飛行機を飛ばして遊んでいた。


「こんなハシャイでいる息子を見るのは、久しぶりです。ありがとうございます」


 ドリスさんが、お礼を言ってくる。


 母親がお辞儀をしたからか、息子も親にならう。


「何が原因だったんだ?」

「あのネクロマンサーが、子どもを病気にして死にいざなっていたモジャ」


 死に魅了させ、自分から命を差し出させようとしていたらしい。


「ひどい」


 モモコが、目に見えて怒っている。


「クニミツどの、モモコどの。私からも、感謝したい」


 息子と一緒に遊んでいた伯爵が、アゴに手を当てた。


「領土をさらに広げてもいいようにしよう。好きに開拓なさい」


 なんなら、近隣の村を分けてもいいという。ゴブリンからオレたちが守った村のことだ。


「そんな。悪いですよ」


 さすがに、伯爵の財源をもらうわけにはいかない。


「そうか。まだ二つ三つ大きい村があるから、食うには困らん。色々発展させていくがよい。それに君らが発展させてくれるなら、彼らも喜んで協力するだろう」


 大変なことになった。村までもらえるとは。


 いろんな土地を回って人を集めてもいいだろうと、伯爵は提案してきた。


「ここはもらっておくモジャ。村を発展させて、農作物やアイテムを売って、生活の足しにするモジャ」

「いいのか?」

「心配ないモジャ。そこまで大儲けはしないモジャ」


 自分たちが食う分は、精霊が作ってくれる。他人が作っても、オレの作物のようにすぐ育つわけじゃない。味も違う。そもそも、どれも村で採れているものだ。オレが種を分けてもらっている。


「他の財源があると、安泰ってだけモジャ」

「それはそうだがな」


 モモコと相談をした。


「旅はしたい。まだ、あんな裏世界からのモンスターに襲われている世界があるかも」


 たしかにな。あの化け物たちは、オレたちが出向いたほうがいいかもしれん。


「その間に、家を見てくれる人は必要かも」


 オレたちの家は精霊だけでもいいが、その周辺には人がいると助かる。


 このところ、この街周辺のクエストばかりだったからな。この付近は現地の冒険者に任せて、新天地へ行くのもいいかも。


「とはいえ、移民をどうやって連れてくれば?」


 船でも三日はかかるだろう。


「大丈夫モジャ。そのためのオイラだモジャ」


 ウニボーは、さっきのポータルを作り出す。


「このポータルに移民を入れるモジャ。村に転送されるモジャ」


 ポータルを消して、ウニボーがまたモモコのアイテムボックスの中へ。


「では、決まりですね。おふたりとも、冒険者カードを」


 オレとモモコは、ドリスさんに冒険者端末を渡す。


「まあ。端末型なのですね。カードレスとは」


 ペン状の魔法杖で、端末の画面に何かをスラスラと描いている。


「これで、あなたがたはアンファンの名誉市民です。どんな商品も格安となります」


 他の街の冒険者ギルドへ行っても、この書状がアレば怪しまれないそうだ。


「あと、二人は領主になりました。代表は、モモコさんの夫であるクニミツさんとなります」

「どうも、ありがとうございます」


 あとは村と話し合って、村に入るかオレたちの領地を拡大して自立するか決めてもらう。


「村と話し合う必要があるな。彼らは事情を知らない」


 ひとまず、村と相談することに。

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