第21話 クルセイダー加入!
この村は、キウレフルというらしい。
「わかりました、クニミツさん、モモコさん。快く引き受けましょう」
キウレフル村の村長が、すぐに応答してくれた。ポータルを設置する地点まで、できあがっている。仕事が早い。
「宿に、ポータル迎え入れ先を設置しました。受付を設けて、村で働くかどうかを決めてもらいます」
「ありがたい」
用事が済んで帰ろうとしたら、モモコが村長に何かをプレゼントした。植物の種である。
「あの、先日はごちそうさまでした」
「ご丁寧に。これは?」
「湯の花の種です。これを村の花壇に植えれば、入浴剤に使える花が咲きます」
他にも石けんに使う薬草の元なども、モモコは村に提供した。
「ほう! お見事ですな。種の段階でいい香りがしますぞ。ありがとうございます」
「いえ。これは、お礼なので。この村のおかげで、お料理のレパートリーも増えたので」
モモコは何度も、ペコペコと頭を下げる。
「それはなによりです。またいらしてくださいな」
「はい。ぜひ」
村を離れて、再びアンファンの街へ。ルイにお別れを言うためだ。
「わたしはクルセイダー。ドリス様に仕える身だ。一緒に旅ができなくてすまない」
「いいんだ。頼もしかった」
オレたちが話していると、ドリスさんがルイに荷物をよこす。
「何を言っているの? あなたも旅に出るのです」
「え、わたしが?」
「ええ。我々の警備は、私兵を雇います」
貴族内の騎士から選抜して、新たに人を呼ぶという。
「わたしは、クビですか?」
「違います。キウレフルの村の警備及び、旅の仲間として同行なさい。あなたはもともと、自由なのですよ。ワタシが引き止めてしまっていた」
どういうことなのか、オレはドリスさんに説明を求めた。
「ルイは、平民の出です」
「ほう」
「騎士として、ルイは王族に仕えていました」
しかし、元が平民ということで貴族上がりの騎士とのトラブルが絶えなかったという。
「だったらウチに来れば? とワタシが誘ったのです」
しかし、ルイほどの非凡な才能の持ち主は、自由人でいた方がいい。ドリスさんは、ずっと考えていたという。
「ある程度のお金を渡して、あとは好きに生きなさいと告げました。しかし、息子が病気になってしまった」
で、ルイを屋敷から出すに出せなくなってしまったと。
「ルイは、外に出たほうが稼げます。その力は、人の役に立ってこそ」
「オレも、同じ意見です。くすぶらせておくには惜しい」
モモコも、オレに続いてうなずく。
「どうもありがとう。では、ルイをお仲間に加えていただけますか?」
「もちろん」
ドリスさんの問いには、モモコが答えた。
「ありがとうっ。ふたりとも。もうあのお茶も菓子も食べられないと思っていた!」
ルイが、腹を鳴らす。
「これは、旅立つ前に腹ごしらえだな」
「うう、お恥ずかしい」
「いいんだよ。腕を振るうから待ってろ」
オレが腕をまくると、ドリスさんが笑った。
ドリスさん一家も交え、パーティをする。いわゆる、快気祝いだ。
「クニミツ、きょうの料理は?」
「鶏ダンゴ鍋だ」
村で育てた鶏をしめ、一部をつみれに。他は骨ごと煮て食べよう。
後は白菜とキノコ類を切る。それを、かまどで開発した土鍋にドーンとブチ込んだ。ダシはどうしよう。しょうゆでいいか。旅先でコンブが手に入りますように。
モモコには、コメをおにぎりにしてもらっている。
領地の仲間になるからと、ルイも手伝っていた。
「では、いただきます」
全員で、鶏ダンゴ鍋を囲む。
オレは鍋をお椀によそう係だ。
「ほら、お前も食え」
オレは、最後の一人に具入りのお椀を渡す。
「はーい。ありがとー。いただきまーす」
青緑のリボンが付いた短パンロリ魔女が、足をパタパタさせながら鍋をつついていた。
「うーん。人間の料理って、おいしいわー。ウワサどおりねー」
「って。お前、誰?」
さっきまで、こんな子いたっけ? 誰も知らないみたい。
「ボクかしら? ボクはノームのピエラよ。ここの元住人の子孫っていえばいいかしらね?」
新しい客人として、ボクっ娘魔女がウインクとともに現れた。
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