ポンコツな君と怖がりな私

@minato1125

第1話それはきっと突然に


『もう君のこと好きじゃないかも』


 言葉が理解できないほどには動揺していた。いつもの大学からの帰り道の私と君。眉を下げてクシャッと笑いながら君が言い放った言葉に私は動けずにいた。スイッチが切れたかのように周りの音も景色も何も入ってこない。私だけが取り残された世界にでもいるような感覚。


『だから嫌いになってくれないと困るんだ』


 好意と慣れと信頼と愛情どれをとって君を表現していいのかわからないけど、この八つ裂きにされたような痛みは離れたくないという思いしか生まれない。理由を聞いて説得する手もあるけど君が真剣になるほど笑顔になることを知っている。優しさはときに残酷だ。無理やりにでも君への気持ちに終わりを告げなければ私は君の優しさに浸かって溺れてしまう。奈落の底へと。君は一緒に落ちてくれるだろうか。


君は振り返り私を見る。いつものように手を差し伸べて。その手を重ねていいか私は迷うそしてまた動けなくなる。夕日を背に君は笑顔で私は今どんな顔をしてるか想像がつかない。


[嫌いになるまでは一緒にいてくれる?]


もちろんと私の意志は関係なく君は私の手を握る。君の手は汗ばみ震えている。本心なの?嘘なの?もう好きじゃないの?君を嫌いにならなきゃいけないの?。疑問ばかりが頭の中で浮かんでは消え浮かんでは消え。


君の優しさを好きになった。


その優しさに今は握りつぶされそう。

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