第4話 架空概念要素
どう考えてもクイーンアンの福音とやらは厄ネタである。
悪魔が群がり、人間までも狂わせる。
イギリス対アメリカの図を作るまでに。
二人の修道女は思案する。
呪われた車、カースドに乗って爆心地から逃げながら。
「あの爆撃機こっち追いかけて来たりしないでしょうね……?」
「どうかなー」
「私の偽装は完璧だ」
どうやら爆撃機が襲って来る様子はない。
ホッとしたのも束の間、カースドの無線に連絡が入る。
『そちらのデビルハンター、どうやって空港の税関を突破した?』
「ちっ! カースド! 逆探知されてないでしょうね!」
「上空からはどちらにせよ丸見えだと思うが……まあその心配はない」
「まるみえー」
通信を切ろうと試みるがどこにチャンネルを変えようと、回線を物理的に切ろうと繋がって来る。
『無駄な事はやめて問いに答えろ』
「……隠蔽魔術って知ってるぅ~?」
『やはり邪の法を使う者か、狙いはなんだ』
「そっちこそ歪な兵器を使って何をしようっての」
話は平行線。
本来なら和平交渉でもしてしかるべき場面なのだろうが、お生憎様、この二人の修道女こと戦闘狂にはそんな考えは無かった。
『英式架空概念要素……』
「は? 今、あんたなんて――」
途切れる通信、リィルはダンッとカースドのダッシュボードを叩く。
「言うだけ言って切りやがった!」
「おちつけー」
「君たまに血が頭に上りやすい時がある」
リィルは深呼吸をして落ち着く、落ち着こうとする。
ロゼがその頭を撫でる。
「だいじょーぶだいじょーぶ」
「でもロゼ、あいつ架空概念要素って!」
「ふむ、エクスカリバー、架空概念要素、兵器転用、少ないながら点と点は線で繋がって来たな」
架空概念要素、それは悪魔を生み出す「素」のようなものである。
大まかな説明はこれでいいが、これに「何か」付随するとその意味合いは変わってくる。
「あいつら悪魔を兵器転用するつもりなんだ……!」
「……そうだね」
「ぞっとしない話だな」
悪魔の兵器転用、それは時代が繰り返してきた「過ち」だ。悪魔の兵器と呼ばれ呪われた品々が世界を何度も蝕んできた。
彼女達もまたその人災の被害者だった。
悪魔の兵器に住んでいた町を焼かれ親や友を奪われた。
残されたのは二人だけ。
その後、狩人教会へ保護され今に至る。
「でもあいつら「英式」っていってた」
「……」
母国で造られた悪魔の素。
それが意味するところは。
「結局、自分ところの尻拭いかよ!」
「落ち着けリィル。あまり車内で暴れるな」
「おちつけー」
興奮するリィルに当て身を喰らわすロゼ。
こくんっと昏倒するリィル。
「それ、頚椎とか危険じゃないのか?」
「へーきへーき、くんれんされてるから」
それ以上カースドは言及しないでおいた。
しばらく無言のドライブが続く。
カンザスシティのホステルに着く。
リィルを担いで運ぶロゼ。
カースドが一声かける。
「ロゼ、君は平気なのか?」
「……おこっている」
「そうか」
それでカースドと二人は別れた。
「くいーんあんのふくいん……きっとそれは」
福音なんかじゃない。
英式架空概念要素という名の悪魔を生み出すなんらかの異物。
ロゼはリィルをベッドに横たえて、考える。
この二人の頭脳担当はロゼである。
「……けつろんはでた」
一人、ロゼはカースドの下に戻る。
「む、どうした。寝たんじゃなかったのか?」
「くいーんあんのふくいんを取りにいく」
「……リィルは」
「おいてく」
エンジン音も鳴らさずに動き出すカースド。
夜のカンザスシティを駆けて行く。
「お嬢さんどこまで?」
「たぶん、ふくいんをもっているのは悪魔でもアメリカでも、イギリスでもない」
「では誰が」
「てろりすと」
簡潔な答えだった。
カースドは関心する。
それならば納得も出来ようというものだ。
イギリスで造られた悪魔の素をアメリカで軍事転用する。
それがテロリストの仕業でなければなんだというのか。
「ならばアメリカと共闘も出来るのでは」
「あっちのやり方はおおざっぱすぎる。こまわりがきかない」
「なるほど、リィルを置いてきた理由は?」
「りぃるも、ちのけがおおすぎる」
ミニミ軽機関銃を振り回す少女に言われても説得力が無いかもしれないが、ロゼが常に冷静なのは事実である。
「テロリストの居場所は分かるのか?」
「おおまかな見当はついてる」
「ふむ、信じよう」
「いいこいいこ」
ハンドルを撫でるロゼ。そのまま方向を指示する。
カンザスシティの道路を駆ける。
その頃、ホステスでは起きたリィルが怒り狂っていた。
「あいつら置いていきやがったーーー!!」
……to be continued?
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