無敵になった俺はかつての仲間を倒したい

ドードー

無「敵」は最強の力

「ダリオ、お前雑魚すぎだから追放な」


あまりに唐突な、衝撃的なリーダーであるマッパの宣言。それによって、俺の頭は一瞬思考を停止してしまった。


 「ちょ、ちょっと待ってくれ! そんないきなり言われても行く宛がないぞ!」


 俺は慌てながらも手を横に振ってマッパの決断を非難するが、彼は首を横に振った。


 「そんなの俺たちの知ったことじゃないね。良いからさっさと出てけ!」


 「そうだそうだ! 前線もまともに貼れない前衛なんて消えちまえ!」

   

 「その通りよ、私がいくらヒールしてもすぐ倒されるじゃない」


 マッパの発言に呼応して、パーティメンバーのハリーとアメックが俺を非難する。

 

 どうやら俺は思った以上にパーティメンバーに嫌われてしまっていたようだ。

 前線を貼れていないのと、すぐ倒されるというのは、火力不足で敵モンスターを落とせず陥落していることが原因なのだが、それを何度言っても彼らには通じなかった。

 

 「分かった、出てくさ。今後も頑張れよ」

 

 俺はそう言ってマッパ達に背を向けると、一人寂しく森の方へと歩いていった。

 

 こんな簡単に非情にクビを言い渡されるとは、思ってもみなかった。


 仮にも半年の間ともに過ごした仲間だったのもあり、俺のショックは大きかった。


 それから俺は森の中を散策していたが、気がつくと夜になって星が見え始めていた。


 「今日は星が綺麗だな。あの星に手が届けば良いのに」


 俺がそう言って一つの黄色く光る星に手を伸ばすと、奇妙なことが起こった。

 なんと、その星が俺の視界から消滅し、代わりに俺の体が虹色に光り輝いていたのだ。

 気のせいだろうか、何やら軽快な音楽までもが俺の体から流れている気がする。


 「な、なんじゃこりゃー!!」

 

 俺はびっくりしてつい大声を出してしまう。当たり前だ、こんな状況で叫ばないほうがおかしい。

 それに反応したのか、ウルフ達が木の陰から姿を現し、俺に向かって襲いかかってきた。

 

 「ま、まず――」

 

 一匹のウルフが俺に触れたその時だった。

 突然、ウルフが強い衝撃を受けたかのように爆散し、俺の足元に肉片となって転がったのだ。


「……は?」


 続けざまにウルフ達は俺の元へと突っ込んでいくが、全員ただ肉片と化すだけで、俺はかすり傷一つすら負わない。

 

 「まさか俺、めっちゃ強くなったのか!?」


 俺は自分の手のひらを見つめながら、そんなことを呟く。

 そこで俺はステータスを確認すれば良いということに気づき、ステータスを開いた。

 

 「なんだこれ、状態異常:無敵!? えーっと、自分の肉体が害だと認識したものを破壊すると。やべぇ、これさえあればモンスター狩り放題じゃん!」

 

 俺は大喜びすると、森の奥深くへと進み、モンスターをどんどん倒していった。

オーク、ゴブリン、ドライアード。そいつらは全て俺の力の前にひれ伏した。

 俺はこの力を使ってみるみるうちに経験値を手に入れ、元パーティメンバーと3倍ものレベルになっていた。

 

 「元々あいつらより俺の方がレベル高かったけど、あいつら信用してくれなかったからな。今ならもう信用どころの話じゃないけど」


 それから数ヶ月後。俺はいつもどおり、モンスターを倒して経験値をひたすら稼いでいた。

 俺は既にレベル90になっていて、もはや無敵なしでも相当強い状態になっていた。


 実を言うと、無敵という状態異常はかなり不便だった。害のある物以外を破壊しないため、その点では日常生活に困ることはなかったが、問題は光と音だ。

 

 これが最大の欠点で、まともに眠れない上に、周りに迷惑をかけ注目を集めるのだ。

 それさえなければ最高なのだが、それを消す方法は未だ見つかっていなかった。


 そんな日常に、少しずつ慣れ始めた今日。事件は起こった。


 「おー、ダリオ。元気にしてたか?」


 マッパ達が俺の目の前に現れたのだ。おそらく風の噂で俺が強くなったことを聞き、よりを戻そうとしているのだろう。

 でなければこんなに面の皮が厚い挨拶はしてこない。


 「ああマッパ、久しぶりだな。俺は元気だ、またな」


 俺はマッパ達の姿を見るのが嫌で、早急に立ち去ろうとした。いくらなんでも虫が良すぎるし、謝罪もなしに話しかけてきたことがとんでもなく不愉快だったからだ。


 「まあまあ、どこか飯でもくいに行こうぜ、四人で一緒に――」


 彼はそう言って俺の肩を掴もうとしたが、それは敵わなかった。

 俺の体に触れた瞬間、マッパの体が勢いよく爆散したからだ。 

 俺の体にマッパの返り血がかかるが、それすらも俺の体は破壊し消滅させる。


 「キャーーー!!」


 辺りから悲鳴があがり、市民の目線が一斉にこっちに向けられる。

 俺は突然の出来事に放心してしまい、その場から動けずにいた。


 「お、お前マッパに何しやがった! このっ、食らえファイアボール!」


 ハリーは激昂し、俺に魔法を放ってきたが、俺の体はその魔法すらも破壊し無効化してしまった。


 だがそれによって俺は思考力を取り戻し、ハリー達の方へと体を向けた。


 「く、来るな化け物! サンダー! アクアショット! ダークネス!」 

  

 ハリーは酷く怯えた顔で俺に立て続けに魔法を放つが、やはり俺に効くことはなかった。


 その時俺は既に気づいていた。なぜ

マッパが爆発したのか。

 そして俺はその理由を知ったせいか、つい魔が差してハリーの体に手を伸ばしてしまった。


――バシュン!


 するとハリーの体は勢いよく膨れ上がり、まるで爆発魔法を食らったかのように無数の肉片となって飛び散った。


 「ひっ……いやぁぁぁぁ!」


 アメックは叫び声を上げ、俺から逃れようと慌てて走り出すが、彼女と俺ではレベル差は歴然で、逃げられるわけがなかった。

 俺はアメックを壁に追い詰め、ゆっくりと近づき彼女の体に触れようとする。


 「待って、私が悪かったから近寄らないで! お願い、もうあんたには金輪際関わらないから!」 


 「そう硬いことを言うなよ、一回触れるだけなんだ。それで俺の体がお前を害と見なしているかが分かる。もし見なしていなければ見逃すさ」


 俺はにっこりと彼女に微笑みかけ、手を伸ばせば触れられる距離まで近づいた。


 「な、なに言ってんのよあんた! 意味分かんない、良いからどっか行って!!」


 「お前が理解する必要はないさ。まあ無理だと思うけど、お前が生き残れるのを期待してるよ」 


 俺はそう言って彼女に手を伸ばし、彼女の顔に手を当てた。

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無敵になった俺はかつての仲間を倒したい ドードー @tarizuki

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