第2話 出会い

 楓とはネットのSNSで知り合った。趣味垢って奴で、最初は匿名で話してただけだったのに、気づけば意気投合してLIMEまで交換していた。


「僕、仙台なんだよね」


「私は関東」


「いいな、行ってみたい。ねぇ、よかったら会わない?」


 たったそれだけの約束で、土曜日の晩に高速バスに飛び乗って会いに行った。そういえば年齢だって聞いていなくて、初対面で笑い合ったのを覚えてる。


「改めて、柊木 楓ひいらぎ かえでです」


「僕は近江 晃おうみ あきらと言います」


「それじゃ、早速」


「投げにいきましょうか!」


 僕らは初対面であるのも忘れて、ダーツバーに駆け込んだ。


 僕は26で彼女が21。彼女は高校を卒業してそのまま事務職へ就職。僕は大学卒業後、新卒でメーカーに勤務。そんなことを投げながら話していると、昔から知ってたみたいな距離感で。


 つい、口が滑って。


「なんだか、僕たち昔から付き合ってるみたいですね」


「え?」


「……あ、いや」


「……まあ、確かに?」


「え、っと。柊木さんが良ければ、また一緒にダーツ投げに誘ってもいいですか?」


「うーん、どうですかね」


「あぁいや、無理にとは」


「付き合ってるなら、考えてもいいですけど」


「え? あ、なるほど……」


 彼女はいつでも笑顔で、とにかく優しい献身的な女性だった。けれど、その裏芯が通っていて、頼りになる。こちらが年上で、5つも離れていると思えなかった。


 そんな流れでちょっと情けなくも思いつつ、後出しで交際をお願いした。彼女はダーツで私に勝てたらいいですよ、なんて冗談を言いながらも、この日が空いてますなんて、可愛い笑顔で提案してくれた。出会ってまだ数時間の出来事だった。


 *


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る