椅子に座る。足を組む。そこに両手を重ね置く。そうするだけで無数の服の皺が目に入る。ズボンの膝の裏にできた皺、重ねた部分にできた皺、ベルトの上にできたカッターシャツの皺。何にせよ、それぞれに長さがあり幅があり、高さがある。服の皺とはえてして身体という大地の上に現れた山脈なのである。そしてそれぞれの山脈の地質調査をしてみると、カッターシャツにできた山脈の方が、明らかにズボンにできた山脈よりも柔らかい岩石を多分に含んでいるであろう。

 さてその皺を、ちょっと力を入れて指で摘んでみた。すると指が反り返って、関節の部分に新たな皺ができた。指の皺は、皮膚が盛り上がってできる山脈ではなく、折り目のようなもの、いわば海溝である。そういえば、掌を握ったり開いたりしてみるとたくさんの皺が現れる。気づかなかったような細かなものまで、びっしりと地表を走っている。人間の体はなんとも忙しいものである。

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