第6話 専用化
武器種をナイフから剣へと変更すると、品質が並品質まで下がってしまいました。
イナリが言うには、そういうものらしく、魔物を倒して魔石を砕けば、また品質が上がるとのことです。
メイはコンクールへ出す為に、ひたすら魔物を倒して剣を鍛え上げました。ナイフに比べて多くの魔物を倒すことになりましたが、なんとか最高品質の剣に仕上げることが出来ました。
メイは街の一角にあるコンクールの受付へとやって来ると、所定の記入用紙に製作者名等を書いて、最高品質の剣へ添えて受付嬢へと差し出しました。
「これは……」
「どうかしましたか?」
受付嬢が、メイの剣を手にしてわなわなと震えていたので、メイは首を傾げて尋ねました。すると、受付嬢はメイの手を取り真剣な眼差しで見つめてきました。
「結婚してくれ!」
「えっ!?」
「いや、違った、私の剣を作ってくれ!」
「えっと……」
詳しい話を聞くと、受付嬢はナナという名の旅の剣士で、自身の剣を鍛えてくれる腕の良い鍛冶職人を探しているそうです。
コンクールで受付をしながら剣の出来栄えを見ていたところ、メイの剣に運命的な出会いを感じて思わず声を掛けたというのです。
「つまり、ナナは自分の手になじむ逸品が欲しいんだね」
「そうだ、私と相性の良い相棒が欲しいのだ」
イナリとナナが互いに確認するようにナナの要望を言葉にしました。
突然イナリが出て来た時には、ナナがビックリして、すったもんだがありましたが、ようやく話が見えてきました。
「それなら、メイと一緒に剣を鍛えるといいよ。武器をナナ専用にすることで、使えば使うほど手になじむようになるよ」
「うむ、詳しくは分からないが、イナリが言うなら信じてやってみよう。で、どうすればいいんだ?」
イナリの言葉を信じたナナは、すっかりやる気になりました。
「ナナはメイが作ったナイフを持ってね。メイは、そのナイフに触れながら画面操作をするんだよ」
「あっ、『専用化しますか』って出たわ。『はい』でいいのかしら?」
イナリの教えの下、メイが画面を操作すると、ナナの持つナイフが青白く光り、画面上に『ナナ専用』と表示されました。
「なんか、不思議な感覚だな……」
「さぁ、いつものように、ダンジョンで魔物狩りだよ!」
感慨深げに呟くナナの背中を押すように、イナリが魔物狩りを宣言しました。
ナナは腕輪の妖精であるイナリを信じているようで、いろいろ突っ込みどころのある状況をすべて飲み込み、ダンジョンへ向かうのでした。
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