今日も僕には彼女はいない

@okidoku

第1話卒業

終わってみれば良い時間だった。大学の卒業式(とはいっても大袈裟な卒業証書授与式なんてものはなく、学位賞を持ってスーツを着て写真を取り合いっこしているだけの会だけれども)でぼくは自分でも意外だったがそう感じていた。

4年前に必死に勉強して入学した国立大学。入学当初は、入学前に描いていた夢のキャンパスライフと理系学部の実態のギャップに押しつぶされ、早々に大学を辞めたいと思っていた。

「ケーちゃん東京でも遊ぼうね!」

一通り写真を撮り終えたハルカが声をかけてきた。

「うん、飲みに行きたいねぇ」

「私の家日本橋だから宅飲みもしよ〜」

ハルカは他学部だが就活を通して仲良くなった。ちょくちょく遊びに誘ってきたり、酔っ払うともたれてきたり、好意を感じることはちょくちょくあった。某大手デベロッパーへの就職が決まっており、好立地の社宅への入居も決まっている言葉通りの優良物件だ。が、顔がタイプじゃない。

「うん、東京組のみんなで集まろう」

しれっと2人きりは避け、みんなで写真撮ろう!と言う声を聞いて写真撮影に並んだ。

メガネメガネメガネモジャメガネ。最初は嫌悪感しか湧かなかった理系特有のこの光景も、卒業の今となっては愛おしくも感じる。卒業後の証券会社ではお姉さんと遊ぶのに忙しくて、もうこいつらと遊ぶこともないだろうな、、と儚さを感じつつ、笑顔で写真に写った。

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