第8話
リビングにあるソファに寝転がって、仮眠をとっていると方を叩かれて飛び起きる。紺色に白のラインが入ったパジャマを身に纏う沙和ちゃんの姿がそこにはあった。
可愛らしい姿に負けないくらいに恐ろしい顔をして、ハスキーボイスで言うのだった。
「·····記憶がなくなるか、存在がなくなるか。どっちがいい?選ばせてあげるドン」
「太〇の達人の悪用はやめて!叩くところは太鼓じゃなくて、頭じゃん」
「だって、だってぇ·····」
最後の方は駄々っ子に似た、それを感じた。俺だってパンイチ姿を沙和ちゃんに見られたと思うと恥ずかしい。
「·····今回は全面的に私が悪いので、仕方ないと割り切るとして、私が言いたいのはベッドがひとつしかないから、どうするかということで」
「じゃあ、一緒に寝るしかないな」
「だから·····私達も大きくなったんだから」
「え?翔は弟だからいいの、って言ってくれないのか?」
「そ、それは·····」
それは初めてのお泊まりの時だった。
♣
「ごめんー!突然だったから、お布団、ひとつしか用意できなかったの」
沙和ちゃんのお母さんがいってくる。翔は小学五年生で一応、恥ずかしいという気持ちはあるお年頃だった。
でもさわちゃんはそんなことは気にしていない。
「じゃあ、一緒に寝よっか。しょう」
「え、でも·····」
「弟と一緒に一回、寝てみたかったの。家族だったら普通に添い寝くらいするでしょ?」
「そ、そうかな·····」
翔はさも、当然と語るさわちゃんに言いくるめられて寝ることになる。二人で寝るには少し狭くて体を寄せ合う形になる。
「暖かいね·····」
「暖かい」
そんなことを言いながら、眠りについた。寝るまで、なんの話をしたかは覚えてなかったが、楽しかったということだけは覚えている翔だった。
♣
昔のことを思い出していたのか、頬をちょっと赤くした。そして小さな口を少しとがらせて言うのだった。
「あの時はあの時だよ」
そう言って、目をそらす沙和ちゃん。そんな姿を見せられたら、攻めに転じるしかないじゃないか。はっきりいって、誘ってんじゃん!
「じゃあ、今は弟して見れないと?」
「そ、そんなことない·····と思う。でもね?節度をわきまえていこうよ。ねぇ?ねぇ!」
「じゃあ、俺がソファで寝るわ」
引き下がるしかない。でもはっきりとしたことは少しだけど、男として俺のことをみてくれているということだ。これは進歩である。
「明日は入学式だけど、終わったら布団買いに行こっか」
「うん。デートだね」
「·····ばか。おやすみ」
「おやすみ、沙和ちゃん」
そう言って握手をした。沙和ちゃんの家では寝る時に握手をするのが、ルールらしい。柔らかく、白い肌の沙和ちゃんの手を堪能するなんて暇はなく、すぐに離れてしまう。
「·····おやすみなさい」
そういうと和室の方に向かった。和室に方にベッドを置いているのはどうかと思ったが、まぁいいだろう。
俺は色々なことがありすぎて疲れたのか、すぐに寝た。
♣♣
ポカポカします。星が欲しい·····!
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