第5話

「翔くんは晩御飯どうするの?外で食べてくる?」


さっきまで散々、俺の手で遊んで飽きたであろう沙和ちゃんが聞いてくる。俺は昼に行き道の船で、お母さんが握ってくれたおにぎりを食べただけなのでお腹は減っている。


「沙和ちゃんはどうするの?」

「私はお金もないし、自炊するけど·····」

「じゃあ一緒に食べる!」


俺は食い気味で言う。沙和ちゃんの手作りの料理·····。食べてみたい。将来のお嫁さんのご飯。いつも作らせる訳じゃないぞ?時々、お嫁さんを気遣ってだな?


「あんまり美味く作れないよ?期待しないでね?」

「あ、うん」


さっきの言葉で思い出した。小さい頃の記憶を·····。あの時は多分、俺が小学生四年生で、沙和ちゃんが中学一年生だったと思う。


外で大雨が降っている。そんな中、2人組の男女が密室で·····。まぁ、変なことは起こらないんですけどねぇ!?


翔は今日、さわちゃんの家にお邪魔している。和室のテーブルを囲んで、勉強会を開いている。さわちゃんは中学生で初めての定期テストを迎えていて、全集中。


翔はさわちゃんがいないと何もすることがないので、横で3DSをいじっている。妖怪を集めるだけのゲームをしている翔に、勉強を一区切り終えたさわちゃんが話しかける。


「しょう。私が今日、昼ごはんを作ってあげます!」


そう言って、元気そうに腰に手を置く。それを聞いた、翔は嬉しそうに3DSを地面において喜ぶ。


「ま、まじで!?ありがと。楽しみだなぁ!沙和ちゃんのご飯」

「期待していーよ。よくお母さんの手伝いするから、美味しいの食べさせてあげる」


そう言って、和室からキッチンへと移動したさわちゃん。中学生になって火を使うことを許可されたので、料理を振舞ってやると意気揚々なのだ。


「ここで待っとくね」


それだけ伝えると、翔は和室にまた腰を下ろした。暇だったので、さわちゃんがしていた数学を眺めるが、難しすぎて気づいた時には妖怪と戦っていた。


一つだけ分かったことは、さわちゃんの字は大人びているということだけ。和室の向こう側で何かを焼く音がする。


その後にニコニコと笑ったさわちゃんがこっちに向かってきた。手には黄金チャーハンを持っていた。


「ふふふ。沙和特製チャーハン。どうぞ?」


そう言って机に置いた。香りは食べ盛りの男の子を刺激するもので、いただきますを言う暇もなく食べ始めた。


が、その手は一瞬で止まるのだった。


「·····っゴホッゴホッ」

「·····はへぇ?」


翔は口に入れた瞬間にむせた。それでも噛んで飲み込んだ。そして目を丸くして、チャーハンをことを眺める。


「ど、どうかした?」


心配そうに、眺めるさわちゃんに翔はひきつりながらも満面の笑みを浮かべて見せた。


「美味いよ!めっちゃ美味い!」


そしてまた食べ始めた。勢いに任して、食べるというよりは飲み干すという表現が正しい。それでも翔は美味しいと言いながら食べた。


さわちゃんは「良かった」とひと安心する声を漏らして、笑った。そして自慢げに言うのだった。


「将来はこの料理でイケメンを落としてみせるんだから!」


そう言って、笑うのだった。胸を張るさわちゃんは可愛い。翔はそれを見て、心底嬉しいと思う。


頑張ってチャーハンを食べきった翔は言うのだった。


「どこかのイケメンなんかより、僕のお嫁さんになってよ」

「しょうがイケメンになったらねぇ?」

「·····いじわるだ!」


そう言って、翔は笑った。そして翔は何も無くなった皿を持って言う。


「ごちそうさま、美味しかったよ。また作ってね?」

「おっけー。」


返事を貰うと、お皿を洗いに行った。洗いおわると、もう勉強を始めていた、さわちゃんの横で3DSを開いてゲームを始めるのだった。


翔がさわちゃんの家から帰ったあとの話で、さわちゃんはまたお母さんの手伝いをしていた。


「沙和!お塩取ってくれない?」

「はーい!」


そう言って、沙和は調味料入れから『Sugar』と書かれたものをとる。


「お塩とってきたよ!」

「これはお砂糖だよ?ほら、しゅがーって書いてあるでしょ?間違えたら大変なことになるんだから。お塩はSALT、だよ?」

「え、本当に?」


さわちゃんは苦虫を噛み潰したような表情をせる。なぜかって、チャーハンに砂糖をぶっかけたからである。


「チャーハンに砂糖かけたらどうなるの?」

「そりゃ、美味しくはないでしょうね」

「やっちゃった·····」


(翔は多分、美味しくないけど私のことを思って全部食べてくれたんだ·····。それも美味しいって言ってくれて)


そんなふうに思った。さわちゃんは翔のいない所で翔にありがとうと感謝を述べるのだった。


あんなことがあったな·····。絶対に美味しくないだろ·····。まぁ、沙和ちゃんが作るならなんでも食べるけどさ?


「じゃあ、ハンバーグ作ってあげよっか?好きだったでしょ?お母さんが作ってくれた時、自慢してたし」

「あ、ありがと·····」

「じゃあ待ってて」


そう言って、くまちゃんが描かれたエプロンを着て、キッチンへと向かった。可愛いもの好きじゃんと思いながら、過去の事件から気を紛らわす為にスマホをいじって待つ翔だった。


♣♣

二人の小さい頃、もっとみたいですかね?

翔みたいに嘘でもいいので、面白いって言ってくれたら嬉しいです。

『☆を僕に下さい!』

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