第2話 変化の日は突然に
時は昨夜まで遡る。それは深夜と玲が深夜の部屋で一緒に某髭のおじさんの有名レースゲームで対戦をしていた時の出来事であった。
画面では玲操る緑の恐竜を先頭に、それを僕操る緑の勇者様が追いかけるレース展開をしていた。
玲はゲームも凄く上手い。僕の方が圧倒的にこのゲームをやり込んでいるというのに、彼女には初めの一回かった試しがない。まあそれでも、僕としてはこうして一緒にゲームをするという時間が好きなので別にいいのだが、いいのだが、やっぱり悔しさも少しはある。
「ねぇ、深夜」
余裕綽々と言わんばかりのその表情にちょっとばかり意地悪したくなった僕は、彼女目掛けて僕は赤色の甲羅を彼女目掛けて投擲するのだが、バナナであっさりガードされてしまった。
「無念。それで何か用?」
「深夜って、S〇Xに興味はある?」
「ぶほぉ……」
その余りの意外な発言に混乱した僕は盛大にハンドル操作を誤り、がけ下目掛けて落下。みるみる順位は落ちていく。
「深夜。汚い」
「だ、だってそれは玲がいきなり変な事言うから……」
「変な発言ってS〇X……」
「二度も言わないでいい‼」
僕の幼馴染がいきなり壊れてしまったのですが、どうすればいいですか?
「そう? 私はてっきり意味が伝わってないものだと思ったから……」
「いや、意味は分かるけど、わかりたくないと言うか……あっていってほしくないと言うか」
流石の僕だって言葉の意味くらい分かる。まあ本音を言えば、この状況では決してわかりたくはないのだが。
「ちなみに私が行ったのは赤ちゃんを作る時にするものの事で、それ以外の用途としては主に交際中の男女が己の性欲を解消するためにまぐわう行為の総称で……」
「生々しいわ!」
そんな僕の叫びと共に、僕の車は再びのコースアウト。これで僕の最下位は確定的になってしまった。なんて思うが、正直今はゲームなんかしている場合ではない。
僕はゲーム機の電源を容赦なくぶつ切りにする。きっとリ〇ットさんが居たら怒られるのだろうが、この時ばかりは許して欲しい。
「む……なんで切ったの?」
どうやら玲は僕がゲーム機を切ったことに不服のようだ。彼女の場合、僕と違って一位をキープしていたわけだから不満に思うのも無理はないのだが、今はそんな事どうでもいい。
「いや、ゲームなら後でいくらでも付き合ってあげるから。それよりも今はあの発言の真意を教えて欲しいというか……」
「S〇X?」
「女の子が何度も連呼するんじゃありません!!」
「あはは。深夜の顔真っ赤!!」
そりゃ真っ赤にもなるだろう。そんな恥ずかしい発言を好きな子から何度も聞かされれば。むしろ何故玲は平然としているのか理解できない。もしかして玲は僕の事を男としてみていないのだろうか……
それか既に他の男性と経験しているとか……
「ん、深夜。今下種な勘ぐりしたでしょ?」
「げ、下種?」
「そうね。例えるなら私が他の男性と既にそう言った経験をしているとかかしら」
「……」
何故バレた。顔にでていたか?
「安心しなさい。私はまだ処女よ」
「そ、そうですか……」
そんな彼女の発言に少し安心したような恥ずかしいようなそれでいて嬉しいと思ってしまう自分がいた。
我ながら単純だなぁ。
「ちなみに深夜は童貞よね?」
「……そうですが何か?」
「そう。それならよかった」
「ははは、そうですか」
それはあれですか? お前みたいな男は一生童貞でいろ的な何かですか?
……まあ玲に限ってそれはないか。だって玲は優しいし。
「そんな事より玲はなんでいきなり、その、セ、セ、S〇Xの話を振ってきたわけさ」
「そんなの単純よ。私が経験してみたいからよ」
「全然単純じゃない!? むしろ何処が単純だと思ったの!?」
「年齢的に見て、性欲が有り余る時期じゃない。私達って」
「それは、そうだね」
確かに玲の言う通り僕たちは、そういう事にもっとも興味津々な時期といっても過言ではない時期だ。ただ生憎僕はそういう事にかなり疎い。というか少々潔癖の癖があると自負している。
そのせいでそういうエッチな発言に対して全く耐性がない。それどころか、自身で言うのさえ恥ずかしさのあまり死にたくなるレベルだである。
「でしょ? それでだんだんと体が火照ってきたというか、性欲を解消したくなったのよ。ね? 単純でしょう?」
「理屈としてはそうだけど……」
確かに理屈としては単純なのだが、なのだが……
「どうしてその欲が今湧いてくるわけさ……」
「そんなの深夜と居るからに決まっているじゃない」
「え、なんで? 僕といるとそういうのが湧いて来るのさ」
「そんなの深夜が好きだからに決まっているじゃない」
「ふぁっ!?」
突然の思い人からの告白に、僕は冷静ではいられない。心臓はどくどくと激しく脈を打っているし、顔は耳まで熱を帯びたように真っ赤で、とてもじゃないが今の彼女の事を直視できるような精神状態ではなかった。
「そ、それは本当なの?」
「ええ、本当よ。私は深夜が好きよ。凄く。凄く、凄~く好き。大好き。世界で一番愛してる」
「あぅ……あぅ……あぅ……」
我ながら情けないとは思うが、仕方がないだろう。だってずっと、ずっと好きだった幼馴染から今、この瞬間告白されたのだ。この気持ちをなんと形容すればいいだろう。言葉にしたくても頭が全く働いてくれない。
「でも付き合う気はないわ」
「……は?」
その言葉を聞いた瞬間あれほど歓喜していた僕の身体は、冷静さを取り戻した。それどころか急速に冷え込み始めている。
「私はただ深夜と突き合いたいだけよ」
「ん? でも今さっき付きあう気はないって……」
「ええ。付き合う気はないわ。突き合う気はあるけど」
「???」
彼女は一体何を言っているのだろう。ますます頭が混乱してきた。
「ああ、ごめんなさい。私が言っている突きあうっていうのは男女の恋人関係ではなく、深夜の「ピー」を私の「ピー」に入れて、そこから深夜の「ピー」を私の「ピー」の中に「ピー」してもらう行為の事よ」
玲は微塵の恥じらいもなく、年齢コードに引っ掛かる際どい発言を連発、しかも平然とした表情で言ってのけた。てかそれならさっきみたいにS〇Xって言えばいいだろ……
「……頭痛くなってきた」
「大丈夫? 薬飲む?」
「……主に誰のせいでこうなったと……」
心底疑問といわんばかりの玲に少しばかりの苛立ちを覚えるが、ここは我慢だ。我慢。
「ああ、初めからこういえばよかったわ」
幼馴染の名案といわんばかりのその顔に、僕は嫌な予感がしてならない。
「深夜。私をセフレにしなさい。そうすればお互いの性欲も解消できて、一石二鳥でしょ?」
「……もう僕には玲の考えがわからないよ」
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