険しい山の中。ひっそりと暮らす少女の元に、一人の青年が訪れる。
『彼』は少女に「太陽に最も近い場所を目指している」と呟いた。それは自身の罪を灼くため───そして、最愛の弟に逢いに行くためだと感じる。
旅人の瞳。太陽の赤と青空の瞳。
『彼』は山を登り太陽に近づく。そして、空にも近づいていく。
死者は空の向こうに行くと言うが、『彼』の弟は今、何処の空を揺蕩っているのだろうか。そして近くまで逢いに来た兄になんと囁くのだろうか。
旅人は山の上に立ち、自分の不甲斐なさに涙するだろうか。
それとも弟に微笑みかけ、優しく涙を溢すだろうか。
旅人の紅い髪が、空と混ざり合う瞬間。その日を待ち望んでいる。