リコミヨ

ササキタツオ

第1話「静かな海での出会い」

美世のMO「高校の図書室。ここが私の居場所だ。自由な空想と静寂の空間。まるで海の中を散歩するダイバーみたいな気分になれる」


理子のMO「近頃の図書室は静かだ。普段も無論、静かではあるのだが、新型のウイルス流行の影響のせいか、私のほかは受付の生徒が一人いるだけだ。私は新聞を閉じた。たかが16歳が世の中に意見できることなんてない。そう思うと少し悲しい」


美世「閉館時間でーす」

理子「あなた、いつも受付やってるよね?」

美世「ここ、私の居場所みたいなものなので」

理子「え。当番じゃないの?」

美世「みんなに代わってもらっているので」

理子「なるほど。みんながサボりたいのか、あなたがよっぽど図書室が好きなのか……」

美世「私、この場所が大好きなんです。図書室って、静かな海の中にいるみたいな感じで落ちつくじゃないですか」

理子「海の中?」

美世「本が魚で、ここが海の中なんです。静かでずっと潜っていたくなるような、そんな海の中だと思いませんか?」

理子「ああ……。なんか、わかるかも……」

美世「本当ですか!?」

理子「でも、あなた、変わってると思う」

美世「私、1年C組の大空美世っていいます」

理子「私は……」

美世「1年A組、冴木理子さん」

理子「ああ、貸出カードか……」

美世「正解!」

理子「あのさ。大空さん、一つ聞きたいんだけど。あなた、なんか、のん気じゃない?」

美世「え? 何がです?」

理子「いや。コロナとかでさ、世界が混乱している時に、冷静というか、穏やかっていうか……なんかすごいなって」

美世「この場所にいると落ち着くからです」

理子「え? 図書室のおかげ?」

美世「だから理子も大丈夫だよ」

理子「大丈夫?」

美世「一緒に深呼吸しよ」


理子のMO「美世に言われて、私は、静かな海で呼吸を整えた。これが私たちの出会いだった」

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